最新記事

中国

イケア1社より少ない中国のフィリピン支援額

世界からケチと非難を受けて重い腰を上げた中国政府だが大国の威信回復には手遅れ

2013年11月21日(木)17時01分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

助けを! 巨大台風による死者数は4000人に迫ろうとしている Cheryl Ravelo-Reuters

 超巨大台風ハイエン(台風30号)の被害を受けたフィリピンに対する中国の冷めた対応には、激しい非難が浴びせられている。発端は、最初に表明した支援金額がわずか10万ドルだったこと。これはスウェーデンの大手家具メーカー、イケア1社が出したよりも少ない額だ。

 中国共産党の新聞が、支援を受けておいて文句を言うのは「恩知らず」と非難するにいたって、批判はますます強まった。その後中国は態度を少し改め、支援額を140万ドルに引き上げたが、その程度ではとても非難は収まらない。中国が世界に誇る病院船「和平方舟」も、上海の港に停泊したままだった。

 中国自身もこの巨大台風の影響を受けていて、南部では住民が避難を余儀なくされる事態が起こっていたという事情もある。それでも、フィリピンのような小国が歴史的災害の影響を受けている傍らで、世界の超大国になろうという国が国内事情を言い訳に傍観していていいはずはない。たとえ、南シナ海の領有権をめぐって両国が対立していようとだ。

 現にそうする間にも、イケアはフィリピンへの支援額を上積みして中国政府の2倍近い270万ドルを拠出した。

 だが、中国もようやく国際社会からのメッセージを聞き入れたようだ。中国の新華社通信は、300のベッドと20の集中治療室、それに8室の手術室を備える和平方舟が救助のためフィリピンへ出航するというニューヨーク・タイムズの記事を認めた。巨大台風がフィリピンを襲ってから2週間近く経った後のことだ。

 中国外務省の報道官は淡々とこう話す。「この任務が中国国民からフィリピン国民への友情のしるしとして、医療施設が不足する被災地の役に立つことを期待する」

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中