最新記事

仏教

YouTubeでばれたタイ僧侶の贅沢三昧

スマホや車で堕落していく僧侶たちへの処分は警告が精一杯

2013年7月5日(金)16時26分
パトリック・ウィン

セレブ僧 禁欲とは程遠い豪華生活が問題に(YouTubeの映像から。プライベート・ジェットの中で)

 夕食はなし、ビールもセックスもなし。凡人には考えられないだろうが、僧侶ならそれが当たり前。でも中には、一般庶民が夢にも思わないほどの贅沢を味わっている者もいるらしい。

 敬虔な仏教国タイで、あるYouTubeの映像が波紋を広げている。映っているのはオレンジ色の袈裟をまとった3人の僧侶。しゃれたプライベートジェットに乗り、派手なサングラスにイヤホン姿。革張りの座席には、ルイ・ヴィトンのバッグが置かれている。

 禁欲に徹すべきとされるタイの僧侶の問題行動が報じられるのは初めてではない。薬物摂取や買春をしたり、高級外車に乗る姿がたびたび新聞をにぎわす。それでも、こんな贅沢な様子がビデオで撮られたのは珍しい。

 タイではたいていの男性が一度は出家するが、2週間ほどで還俗するのが普通だ。大多数の人は出家の間、喫煙やゲームといった俗世の習慣を断てない。戒律が求めるような敬虔さを持ち続けるのは難しくなっている。

 伝統的に僧侶は金銭に触れるのを禁じられているが、現代社会でそれはまず不可能。携帯電話の所有も今や普通だ。慈悲の教えで共同体を支える僧侶にとり、これらは些細な戒律違反でしかない。だが中には、贅沢三昧のセレブのような僧侶もいる。

 今回問題視されたのは、東北部シーサケット県の寺院の住職ルアン・プ・ネンカーム・チャティゴ(33)。タイのマティチョン紙によれば、プライベートジェットの持ち主だ。寺の入り口近くにはヘリポートもあったと、バンコク・ポストは報じた。

 彼のサイトには、その伝説的な逸話が書かれている。ある日、瞑想の後で池の上を浮かぶように歩いた。洞窟の中で3カ月瞑想をしたが、ニシキヘビが彼の胸で休むこともあった。やがて他人には見えない不思議な物が見えるようになり──。

 こうしたとっぴな主張は、政治家や大物実業家を支援者に持つ高僧には珍しいものではない。

 タイの国家仏教事務局は、過度の商業主義と「魔術」には公式に反対。ノパラット局長はAP通信に対し、問題の僧侶たちは警告を受けたと語った。

 同時に彼は、誘惑の多さについても理解を求めた。「仏陀が生きていた頃はスマートフォンも車もカメラもなかった。だからルールはずっと簡単だった」

[2013年7月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中