最新記事

消費

中国ブルジョアが偏愛する高級品ベスト5

ますます豊かになる新興富裕層を魅了する珍しい贅沢品と、巨大市場ならではのバカにならない波紋

2010年11月5日(金)18時21分
ジャレド・モンドシャイン

みどりの黄金 翡翠は今や同じ量の金より価値がある Claro Cortes IV-Reuters

 経済成長を続ける中国でますます裕福になるブルジョワ層は、高級ブランドや不動産に目がないことで有名。しかし一方で、ひと味変わった特定の贅沢品にも執拗なほどの購買欲を示している。ここでは、なかでも人気の高い5つの品と、需要の高さが及ぼす思わぬ影響を解説しよう。

■翡翠

 癒しの効果があるとして、数千年にわたって歴代皇帝にあがめられてきた「みどりの黄金」。かつては少量だと実質的な価値はなかったが、今では最高級の翡翠は同量の金よりも価値がある。

 希少とされることもあり、価格はこの10年で10倍に高騰。今では1オンス(約28グラム)あたり3000ドル近い。しかし実際には、取引業者が言うよりはるかに大量の翡翠があるとも批判されている。

 さらにややこしいのは、最高級の翡翠の多くが中国西部の新疆ウイグル自治区で産出されること。この地域では昨年、イスラム系のウイグル族と中国の多数派である漢族が衝突し、少なくとも150人が死亡した。

 当然ながら、他の国々も中国市場へ進出し、自国で産出した翡翠を売って儲けている。昨年の北京五輪のメダルに翡翠の装飾が施されたことは、世界有数の産出地域であるカナダのブリティッシュ・コロンビア州にとって思いがけない収入だった。

■フカヒレ

 サメのひれを処理・乾燥させた不フカヒレは、中国料理で珍重される高級食材。フカヒレスープは元来、大切な家族の集まりや特別な会合などが行われる際だけに出されるものだった。

 海洋生物の保護団体が行ったある調査によれば、フカヒレ人気の高まりで生息数が83%近く減少したサメもいるという。バスケットボール選手の姚明(ヤオ・ミン)など有名人がサメの保護を訴えているが、フカヒレの人気は収まりそうにない。

 ブラジルでは、違法にサメのひれを採取するために29万頭のサメが殺され、密かに中国へ送られたと環境団体が告発。これを機に国際問題にも発展している。ただし今のところ中国は、ワシントン条約などでサメ類の国際取引を規制しようとする動きをうまく阻止している。

■ワイン

 おしゃれな欧米風のワインが、中国で昔から広く飲まれているアルコール度数の高い白酒や蒸留酒に取って代わろうとしている。

 ディーゼル燃料のような匂いのする白酒は商談には欠かせないものだが、その天下も終焉に近づいているのかもしれない。1人あたりの消費量はまだ少ないものの、今や中国は世界トップクラスのワイン消費国。一般的に飲めるようになってまだ10年程度であることを考えると、驚くべき変化だ。

 中国国内でもワインの生産が盛んになり、2000以上もの国内ブランドがあるという。しかし、量が多くても品質がいいとは限らない。あるワイン評論家は中国製のワインを「非常に質の悪いボルドーの赤」と酷評した。それでも共産体制の中国では、「赤」のほうが人気がある。

■トラ

 トラの骨や爪、ペニスなどは古くから漢方で重用される。トラの骨を使った「虎骨酒」は、精力増進や病の治療に効果があると言われている。

 そうした商品の売買は93年以降違法とされているが、闇市場は数百万ドルの規模に膨れ上がっている。ある調査によれば、トラの毛皮は高価なもので2万ドル、爪は1000ドルもするという。

 野生のトラの生息数が中国ではほぼゼロに近づくなか、「トラ農場」が全国に続々と生まれている。農場側は観光施設だと主張しているが、実際はトラの骨の売買業者の隠れ蓑だというのが一般的な見方だ。一部の動物園も闇取引に加わり始めている。先ごろ、遼寧省のある動物園は骨などの売買のためにトラ11頭を餓死させたと糾弾され、閉館した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中