最新記事

対談

ツイッターが変える日中の未来(3)

2010年11月5日(金)13時15分

津田:私は音楽やバラエティをコンテンツとするニュースサイトを友人と運営しているのですが、安替さんは新たな独立メディアをつくるつもりはないのですか?

安替:私が興味があるのは政治や外交や社会運動、それにツイッターがどう社会に変化を呼び起こすか、です。我々はなぜ伝統メディアがお金を稼ぐことができるのかを知る必要があります。ニューメディアはそれを無視しているところがある。たとえば新聞には単に情報を提供するだけでなく、読者の「学びたい」という欲求を満足させる機能がある。ある種の権威性といっていいかもしれない。

津田:たとえば先ほどの政治家ランキングをつくるにしても、僕はどうしてもコストがどれだけかかるか、というところをまず弾いてしまう。

安替:アメリカのサンライト財団はネットで収入を得ているわけではありません。民間からの募金でまかなわれているのです。アメリカはとても健康な市民社会の国。お金のある人が寄付すればいい、というスタイルが確立されている。

津田:寄付減税もありますしね。

安替:日本のニューメディアの人たちもそれを利用すればいいのです。彼らは寄付対象を何もアメリカに限っているわけではありません。市民社会を発展させるのは本当に難しい。日本はサラリーマン精神ならぬ「セールスマン精神」を発揮すべきなのでは(笑)。

そうやって集まるお金はネットで何もしないで集まるお金よりずっと多いはずです。どれだけ稼ぐかでなく、どれだけ募金してくれる人を集められるかをもっと考える。たとえばジョージ・ソロスのオープンソサエティ・フェローシップからも資金をもらえるはずですし、ナイト財団という組織もネットとコミュニティに関するプロジェクトに資金を提供しているはずです。<終>

[安替]
1975年南京生まれ。南京師範大学卒。コンピュータープログラマーを経て新聞記者に。03年、「21世紀環球報道」紙の特派員としてイラク戦争を取材。その後「ニューヨーク・タイムズ」紙北京支局リサーチャーなどを経てブロガー、「南方都市報」コラムニスト。日本の国際交流基金の招きで今年10月から2カ月間日本に滞在中。@mranti

[津田大介]
メディアジャーナリスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。大学在学中からIT・ネットカルチャーの分野で執筆活動を開始。09年著書『Twitter社会論』刊行。現在は早稲田大学大学院でネットジャーナリズムの授業も教えている。ツイッターでイベントを生中継することを意味する「tsudaる」の語源でもある。@tsuda

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中