ツイッターが変える日中の未来(3)
津田:私は音楽やバラエティをコンテンツとするニュースサイトを友人と運営しているのですが、安替さんは新たな独立メディアをつくるつもりはないのですか?
安替:私が興味があるのは政治や外交や社会運動、それにツイッターがどう社会に変化を呼び起こすか、です。我々はなぜ伝統メディアがお金を稼ぐことができるのかを知る必要があります。ニューメディアはそれを無視しているところがある。たとえば新聞には単に情報を提供するだけでなく、読者の「学びたい」という欲求を満足させる機能がある。ある種の権威性といっていいかもしれない。
津田:たとえば先ほどの政治家ランキングをつくるにしても、僕はどうしてもコストがどれだけかかるか、というところをまず弾いてしまう。
安替:アメリカのサンライト財団はネットで収入を得ているわけではありません。民間からの募金でまかなわれているのです。アメリカはとても健康な市民社会の国。お金のある人が寄付すればいい、というスタイルが確立されている。
津田:寄付減税もありますしね。
安替:日本のニューメディアの人たちもそれを利用すればいいのです。彼らは寄付対象を何もアメリカに限っているわけではありません。市民社会を発展させるのは本当に難しい。日本はサラリーマン精神ならぬ「セールスマン精神」を発揮すべきなのでは(笑)。
そうやって集まるお金はネットで何もしないで集まるお金よりずっと多いはずです。どれだけ稼ぐかでなく、どれだけ募金してくれる人を集められるかをもっと考える。たとえばジョージ・ソロスのオープンソサエティ・フェローシップからも資金をもらえるはずですし、ナイト財団という組織もネットとコミュニティに関するプロジェクトに資金を提供しているはずです。<終>
[安替]
1975年南京生まれ。南京師範大学卒。コンピュータープログラマーを経て新聞記者に。03年、「21世紀環球報道」紙の特派員としてイラク戦争を取材。その後「ニューヨーク・タイムズ」紙北京支局リサーチャーなどを経てブロガー、「南方都市報」コラムニスト。日本の国際交流基金の招きで今年10月から2カ月間日本に滞在中。@mranti
[津田大介]
メディアジャーナリスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。大学在学中からIT・ネットカルチャーの分野で執筆活動を開始。09年著書『Twitter社会論』刊行。現在は早稲田大学大学院でネットジャーナリズムの授業も教えている。ツイッターでイベントを生中継することを意味する「tsudaる」の語源でもある。@tsuda