最新記事

インターネット

アフリカ発「サイバー大量破壊兵器」が世界を襲う

2010年3月31日(水)17時11分
フランツシュテファン・ゲイディー(イーストウェスト研究所研究員)

 さらに、(エジプトや南アフリカなどの例外を除き)大半のアフリカの国々には、急速に広がるサイバー犯罪を起訴したり防止したりするための法的枠組みがない。チュニジアで09年に開催されたアフリカ・アラブ地域サイバーセキュリティー会議で合意が得られたにもかかわらず、サイバー犯罪への取り組みについて、国家間の協力体制もできていない。国家のサイバーセキュリティー戦略を推進し、サイバー犯罪の監視体制を強化するとした誓約は、資金不足で頓挫しそうだ。

 だが明るい兆しもある。いくつかの国は少なくとも国内レベルでは体制を整えている。例えばチュニジアは、国家サイバーセキュリティー戦略と電子識別システムに関する法律を制定し、アフリカで最初の国立セキュリティー機関を設立した。

 メールなどで大規模な資金洗浄や商談を持ちかける国際的な金融詐欺「419事件」で悪名高いナイジェリアは、オンライン詐欺の防止を目的に国家サイバーセキュリティー戦略を進めている。

 残念ながらサイバースペース上では、数カ国だけが強力な対策を取っていても意味がない。アフリカの国々の大多数は完全に無防備なままだ。

 その事実が、エチオピアのアディスアベバで、ナイジェリアのラゴスで、モザンビークのマプトで、巧妙な犯罪者をスラムの無規制インターネットカフェに向かわせる。そこには、史上最大規模のボットネットが既に潜んでいるのかもしれない。


Reprinted with permission from www.foreignPolicy.com, 03/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中