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1Dはグループとしてシングル1位になれなかったのに...アイドルとラジオ局の不思議な関係とは?

Why Harry Scored His First No.1 Song

2020年09月16日(水)18時20分
クリストファー・モランフィー

秋に夏を歌う個性派

チャートでトップに立つには、ビーバーと同じく大人に聴いてもらえるアーティストとしてラジオで人気を確立しなければならない。

1Dで最初にこれに成功したのが、さっさと脱退したマリクだった。エロチックなソロデビュー曲「ピロートーク」は発売と同時に1位に輝き、ラジオでも4位まで上昇した。ダンス系R&Bは当時大人気で、R&B界の色男ザ・ウィークエンドの新作が出ていない時期を突いたのも賢かった。

一方、スタイルズはいばらの道を歩んだ。17年のソロデビューアルバムは硬派なクラシックロックで、今どきのサウンドとは言えなかった。デヴィッド・ボウイ風のシングル「サイン・オブ・ザ・タイムズ」は4位まで行ったが、ラジオのオンエア回数は最高で21位だった。

続く2曲はホット100に届かなかった。ジャスティン・ビーバーより憧れのジョニ・ミッチェルに忠実なスタンスは尊敬に値するが、ポップスターとしては1D活動休止後の勢いを自分でつぶしてしまった感が否めない。

だから2枚目の『ファイン・ライン』を、ロックテイストを残しつつラジオ受けのいいサーフミュージックに仕上げたのは英断だった。その後はシングルを出すたびに、ヒットへの扉が少しずつ開いた。昨年10月にはバックコーラスが幻想的な「ライツ・アップ」が17位に浮上、4月にはエレクトロポップの「アドア・ユー」がスマッシュヒットして6位になった。

こうして足掛かりを築いたスタイルズが、満を持してエキセントリックな個性を解き放ったのが「ウィーターメロン・シュガー」だ。

サビは「ウォーターメロン・シュガー・ハイ」と繰り返すだけ。昨年11月にバラエティー番組『サタデー・ナイト・ライブ』でも歌ったが、季節は晩秋でステージはスタジオ内。「夏の夕方のイチゴみたいな味だね」の歌詞で始まるこの曲は、何とも季節外れで風変わりに響いた。

時は移り、新型コロナウイルスに呪われたこの夏、ついに「ウォーターメロン・シュガー」はチャートを制した。感染拡大が始まる前に撮影されたビデオではビーチで美女が戯れ、「今こそ触れ合おう」のテロップが流れる。

これでスタイルズも、どうやら知名度に見合った存在感をラジオとチャートでも見せつけることができた。

ビートルズ解散後、ソロでヒット曲を出すのが一番遅かったのはジョン・レノンだ。その彼と同様、スタイルズも熟成までの時間を必要とした。レノンがソロで初めて1位を取った曲「真夜中を突っ走れ」で歌ったとおり、遠回りでも「光が見つかれば、それでいい」のだ。

© 2020, The Slate Group


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