1Dはグループとしてシングル1位になれなかったのに...アイドルとラジオ局の不思議な関係とは?
Why Harry Scored His First No.1 Song
2枚目のソロアルバムでロック色を残しつつ、ラジオ受けのいい音楽を実現したスタイルズ KEVIN MAZUR/GETTY IMAGES FOR CITI
<活動休止中の1Dのハリー・スタイルズがシングル全米1位を達成 「オンエアを制する者はチャートも制す」を証明したが......>
夏も盛りを過ぎると意外なヒット曲が現れる。チャートをさまよっていた曲が突然、トップに躍り出るのだ。
一昨年の9月には、前の年に発表されたマルーン5の「ガールズ・ライク・ユー」がビルボード・ホット100のトップに立った。カーディ・Bをフィーチャーしたバージョンで、4カ月以上にわたりトップ圏内をウロウロした末の快挙だった。
昨年9月には、春から少しずつチャートを上昇してきたリゾの「トゥルース・ハーツ」がついに栄光の頂点に到達。なんと2017年の発売から2年かけての偉業だった。
この夏の思わぬヒットは、無期限活動休止中のワン・ダイレクション(1D)のメンバー、ハリー・スタイルズの「ウォーターメロン・シュガー」だ。リチャード・ブローティガンの1968年の小説『西瓜糖の日々』(邦訳・河出文庫)から題名を借りた、ゆるくてシンプルな曲だが、あれよあれよという間に人気が出て、スタイルズに初の全米1位の栄冠をもたらした。
これは昨年12月発売の2枚目のソロアルバム『ファイン・ライン』からカットされたサードシングル。デジタル時代の今は、アルバム発売の頃には収録曲の全てがダウンロードやストリーミングで行き渡っている。だからリミックスや有名なゲストとの共演といった新機軸を打ち出さないと、チャートの上位に食い込むのは難しい。
グループで1位は取れず
ところが「ウォーターメロン」はどちらもやってない。ただし、ちょっとしたレトロな仕掛けはあった。限定盤のアナログレコードやカセットを発売したのだ。これでファンが殺到し、その売り上げが1位獲得を後押した。
とはいえラジオでのオンエア回数が多くなれば、そしてテイラー・スウィフト並みの逸材だという確信がなければ、アルバム発売元のコロンビアもアナログ盤までは作らなかったはずだ。
「ウォーターメロン」は8月上旬まで7位だったが、その翌週に1位に浮上した。1Dのメンバーがソロでシングル1位に輝いたのは、スタイルズが2人目だ。
グループとしての1Dはデビューから4枚立て続けに、ビルボードのアルバム200でトップに立った。大変な偉業だが、15年までの活動期間中にシングルで1位になることは一度もなかった。