米政府のサイバー責任者はコンピューター音痴
テクノロジーの知識より幅広い知識のほうが重要と言うサイバーセキュリティー責任者の勘違い
安全保障の危機 調整官は最先端のサイバー攻撃にも立ち向かう重要な任務 Bigstock
たとえその分野で高いスキルを持たなくても、面接の場で多少のはったりをかけるのはよくあること。だが、その仕事が米政府の「サイバーセキュリティー調整官」だとしたら、はったりなどかけるべきではない。それでもマイケル・ダニエルは、うまくすり抜けてきたようだ。
情報セキュリティーなどを専門にするオンラインメディアのゴブインフォセキュリティーのインタビューで、ダニエルはプリンストン大学とハーバード大学で取得した公共政策の学位や、17年間にわたる米行政予算管理局での経験が、今の自分の仕事に非常に役立っていると力説した。おそらく彼は、政策や連邦予算といった分野に精通していることだろう。
だがダニエルは、こうも言った。「ごく根本的な部分で、サイバーセキュリティーはテクノロジーだけの問題ではないと思う」。つまり、サイバーセキュリティーにテクノロジーの専門知識は大して必要ない、そのほかの幅広い知識の方が重要だ、ということらしい。
最初にダニエルのインタビューに関する記事を報じたオンラインメディアのヴォックスに、コンピューター科学の専門家でプリンストン大学教授のエドワード・フェルトンはこう語っている。弁護士や公衆衛生局長官、経済顧問などの職に、専門の訓練とその分野の幅広い知識、新たな研究を分析する能力などが求められることを考えれば、ダニエルがサイバーセキュリティー調整官という自分の任務に関して、技術的な専門知識は必要ないと考えているのはおかしな話だ。
一方、ダニエルの言い分はこうだ。「この分野で成功するためには、テクノロジーに特化した専門知識を持つよりむしろゼネラリストになる必要がある」。――これはあまり合理的ではなさそうだ。
ダニエルの前任であるハワード・シュミットもコンピューター科学の専門家ではなかった、というのは言い訳にならない。シュミットは9・11同時多発テロ後の2年間、米政府のサイバーセキュリティー対策責任者を務め、03〜09年にネットオークション大手のeベイに移った。