最新記事

医療

がん患者や遺族の誰にでも起こり得る「記念日反応」とは何か

2023年1月21日(土)18時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

記念日反応を知ることでつらさを回避できる

ある乳がん患者さんから聞いた話です。

「主治医は私に『がんの転移は、たんぽぽの綿帽子のように、ふわふわと他の臓器に飛んでくっつきます』と言いました。先生はたとえを使って、わかりやすく説明しようとしたのでしょうが、それから私はたんぽぽの綿帽子を見ると、とてもしんどくなってしまうようになった。10年以上経っているけれど、いまでも綿帽子にがんのイメージが重なって、怖くてちゃんと見られないんです」

また、ある咽頭がんの女性の方は、外来で私にこのように話してくれました。この方は、5年前、抗がん剤と放射線のつらい治療を行い、いまは完治している患者さんです。

「私はひまわりの花を見ると、いまでもとても苦しくなるの。なんでだろうと考えてみたら、ちょうど抗がん剤と放射線の治療で、吐き気とめまいに苦しんでいたとき、友だちが元気を出してと、ひまわりをたくさん病室に持ってきて飾ってくれた。それをぼーっと眺めながら闘病していたわ。それ以来、ひまわりを見ると、その当時のつらさ、苦しさを思い出してしまう。だからひまわりが見られないんです」

お二人には記念日反応のことを話し「あなただけではないですよ」とお伝えしました。すると、お二人ともその後はずいぶん楽になったとおっしゃっていました。

婚約者をがんで亡くした女性から聞いたお話です。彼が亡くなった後、彼女はうつになり、私の遺族外来で治療していました。4年が経過し、徐々に元気になり、新しい仕事もできるようになった頃のことです。

彼女は私に話してくれました。「ある朝起きたら、なぜか身体が重く感じ、気持ちがとてもつらくなりました。仕事に行ける状態ではなかったので休んでしまったんです。お昼過ぎ、『そうだ。4年前のこの日、彼ががんと診断され、泣きながら電話をかけてきたんだ』と思い出しました。そうすると、翌日には体調も戻って仕事にも行けるようになったんです」

私は彼女に、記念日反応のことをすでに伝えていたので、彼女は「これが記念日反応なんだ」と気づいたそうです。そのおかげで大きな落ち込みにならずにすんだのです。このように、記念日反応は事前に知っておくことで回避しやすくなります。

記念日反応への対処方法についてまとめておきましょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中