最新記事

インタビュー

日本はわずか5% DX時代に必須のCDOとは何か?

2021年9月3日(金)10時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
無人の役員室

Igor Kutyaev-iStock.

<諸外国に比べ、日本に圧倒的に少ない役職がCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)だ。DXが課題となるなか、企業はCDOを雇って何をすべきなのか。その答えは、意外とアナログかもしれない>

コロナ禍以降、デジタル技術で事業モデルなどの変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。

実際、リモートワークに切り替わったことで業務の効率化・生産性の向上を実感している人も多いのではないだろうか(逆に生産性の低下を感じている人もいるかもしれないが、それはまた別の問題だ)。

DXが推進されたことで、いま日本で注目を集めている役職がある。CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)だ。

日本ではまだまだ浸透しているとは言い難い役職だが、総務省の情報通信白書によれば、アメリカでは16.8%、イギリスでは27.4%、ドイツでは16.4%の企業がCDOを設置済みと回答しており、諸外国の企業がCDOに対して大きな期待を抱いていることが分かる。

それに比べ、日本はわずか5%だ。

そもそも、CDOとは何か?

CDOとDXの関係やこれからCDOが担うべき役割まで、日本ロレアルで初代CDOを務め、今年1月には「TOKYO FM」のチーフデジタルプロデューサーに着任した注目のマーケター、長瀬次英氏に話を聞いた。

cdobook20210903-2.jpg

長瀬次英氏 Photo:遠藤 宏

――CDOとはどんな役職なのか。

拙著『マーケティング・ビッグバン――インフルエンスは「熱量」で起こす』(CCCメディアハウス)にも書きましたが、CDOを直訳するならば「最高デジタル責任者」。"マーケターの視点"からAIやビッグデータを有効活用し、組織全体のデジタル戦略を統括して、さらに"経営の視点"を持って必要な改革を推進する、いわばデジタル全般の旗振り役です。

この説明だけ聞くと、いかにもデジタル至上主義で、パソコンの画面ばかり見ている印象を受けるかもしれません。

でも、その本質は「(デジタルを活用して)解決すべき問題に取り組み、さらなるビジネスの向上を図るために、戦略を立てて、ひたすら実行に移していく」ことだと僕は考えています。これって「デジタルを活用して」の部分を除けば、どの企業でも取り組んでいることですよね。

勘違いしている人も多いですが、CDOは何もかもをデジタル化することが目的ではない。

実際、僕はリアル店舗を重要視していますし、「人に興味を持ち、人を理解しようとする姿勢」が、CDOに最も必要な資質だと思います。

――アフター・コロナの時代、各企業ともにDXが大きな課題になっている。

組織のデジタルシフトはCDOに求められる重要な任務の一つです。

コロナ禍以降、Eコマースやストリーミング配信が大きく躍進したことで、個人の消費行動や趣味・嗜好といった「個」のデータが圧倒的に集めやすくなりました。

また、リモートワークも浸透したことで働き方も大きく変わりました。

短絡的に考えるなら、デジタルですべて完結できるビジネスモデルにシフトしたほうがより効率的で利益率も上がると感じるかもしれません。

ただ僕の経験上、ECの普及によって売り上げが大きく落ち込んだとしても、実店舗には存在意義があり、かけがえのない価値があります。実際、コロナ以降、店舗にロイヤルカスタマーだけを招待することで、売れ行きを大きく伸ばしているブランドもある。

結局、人と人との本当のつながりは直に話すことでしか生まれない好例ではないでしょうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者が訪米、2日に米特使と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中