日本はわずか5% DX時代に必須のCDOとは何か?
Igor Kutyaev-iStock.
<諸外国に比べ、日本に圧倒的に少ない役職がCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)だ。DXが課題となるなか、企業はCDOを雇って何をすべきなのか。その答えは、意外とアナログかもしれない>
コロナ禍以降、デジタル技術で事業モデルなどの変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。
実際、リモートワークに切り替わったことで業務の効率化・生産性の向上を実感している人も多いのではないだろうか(逆に生産性の低下を感じている人もいるかもしれないが、それはまた別の問題だ)。
DXが推進されたことで、いま日本で注目を集めている役職がある。CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)だ。
日本ではまだまだ浸透しているとは言い難い役職だが、総務省の情報通信白書によれば、アメリカでは16.8%、イギリスでは27.4%、ドイツでは16.4%の企業がCDOを設置済みと回答しており、諸外国の企業がCDOに対して大きな期待を抱いていることが分かる。
それに比べ、日本はわずか5%だ。
そもそも、CDOとは何か?
CDOとDXの関係やこれからCDOが担うべき役割まで、日本ロレアルで初代CDOを務め、今年1月には「TOKYO FM」のチーフデジタルプロデューサーに着任した注目のマーケター、長瀬次英氏に話を聞いた。
――CDOとはどんな役職なのか。
拙著『マーケティング・ビッグバン――インフルエンスは「熱量」で起こす』(CCCメディアハウス)にも書きましたが、CDOを直訳するならば「最高デジタル責任者」。"マーケターの視点"からAIやビッグデータを有効活用し、組織全体のデジタル戦略を統括して、さらに"経営の視点"を持って必要な改革を推進する、いわばデジタル全般の旗振り役です。
この説明だけ聞くと、いかにもデジタル至上主義で、パソコンの画面ばかり見ている印象を受けるかもしれません。
でも、その本質は「(デジタルを活用して)解決すべき問題に取り組み、さらなるビジネスの向上を図るために、戦略を立てて、ひたすら実行に移していく」ことだと僕は考えています。これって「デジタルを活用して」の部分を除けば、どの企業でも取り組んでいることですよね。
勘違いしている人も多いですが、CDOは何もかもをデジタル化することが目的ではない。
実際、僕はリアル店舗を重要視していますし、「人に興味を持ち、人を理解しようとする姿勢」が、CDOに最も必要な資質だと思います。
――アフター・コロナの時代、各企業ともにDXが大きな課題になっている。
組織のデジタルシフトはCDOに求められる重要な任務の一つです。
コロナ禍以降、Eコマースやストリーミング配信が大きく躍進したことで、個人の消費行動や趣味・嗜好といった「個」のデータが圧倒的に集めやすくなりました。
また、リモートワークも浸透したことで働き方も大きく変わりました。
短絡的に考えるなら、デジタルですべて完結できるビジネスモデルにシフトしたほうがより効率的で利益率も上がると感じるかもしれません。
ただ僕の経験上、ECの普及によって売り上げが大きく落ち込んだとしても、実店舗には存在意義があり、かけがえのない価値があります。実際、コロナ以降、店舗にロイヤルカスタマーだけを招待することで、売れ行きを大きく伸ばしているブランドもある。
結局、人と人との本当のつながりは直に話すことでしか生まれない好例ではないでしょうか。