最新記事

深圳イノベーション

コロナ後、深圳の次にくるメガシティはどこか──「プロトタイプシティ」対談から

2020年8月14日(金)07時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

高口 高層都市、プロトタイプシティは今、どこに生まれているのか。具体的に予測することは難しい。深圳にしても、現時点では誰もが認めるイノベーションの都ですが、ほんの五年前の時点では、信じない人のほうが多かったでしょう。私は、二〇一七年にある経済誌に深圳特集の企画を提案したのですが、「ソニーぐらいの大企業が生まれてからやりましょう」と返されたことをよく覚えています(笑)。

おそらく、ネクスト・プロトタイプシティの予測は、次のユニコーン企業を探すのと同じように難しい。ユニコーン企業とは、評価額一〇億ドル以上の未上場企業を指しますが、未上場企業の評価額は株価とは違い、日々変化するものではありません。新たに資金調達する時に、いくら出資したらどれだけの株を取得できるのかを決めるための値付けです。だから、融資する側が一〇億ドル以上の価値があると予測した時点で、突然ユニコーンになるわけです。

つまり、「この会社はユニコーンになりそうだ」と、みんなが思った時点でもうユニコーンになっているわけです。プロトタイプシティも同じで、「ここが新たなイノベーションの発信源になる」とみんなが予測した時点でプロトタイプシティになっている。そのため、一歩手前の状態というものが基本的にはなく、「なるかどうかわからないが有望」の次の段階は、もう「なっている」わけです。

伊藤 おっしゃるとおり、具体的な都市名をあげて「ここがプロトタイプシティだ、ポスト深圳だ」と予想することは困難ですね。ただし、前述のとおり、プロトタイプシティになるであろう都市には、いくつかの条件が必要です。条件を吟味することは可能ではないでしょうか。

山形 一つの条件として考えられるのが、産業基盤の蓄積です。関満博(せきみつひろ)『フルセット型産業構造を超えて 東アジア新時代のなかの日本産業』(中公新書、一九九三年)という本があります。彼は、日本の製造業が持つ技術を基盤的技術、中間技術、特殊技術に区分し、ピラミッド型の技術集積構造にあると位置づけています。

底辺にある基盤的技術は鋳造、鍛造、メッキ、熱処理などの「3K職種的色合いの濃い加工技術」で、東京都大田(おおた)区、川崎(かわさき)市、東大阪(ひがしおおさか)などの中小零細企業が担う部分です。最上部の特殊技術は先端的技術であり、大企業やハイテク型ベンチャーが担い手です。中間技術は生産技術や組み立て加工に加え、コネクターや集積度の低い半導体など、一時代前の特殊技術も含まれています。

【関連記事】TikTokとドローンのDJIは「生まれながらの世界基準」企業

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中