最新記事

科学技術大国 中国の野心

AI開発でアメリカが中国に負けている4つの理由

2018年1月24日(水)12時05分
ジョン・アレン(米退役大将、スパークコグニション取締役)、アミール・フセイン(スパークコグニションCEO)

ILLUSTRATION BY GILLIAN BLEASE/GETTY IMAGES, ISTOCK (BACKGROUND)


180130cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版1月23日発売号(2018年1月30日号)は「科学技術大国 中国の野心」特集。AIからビッグサイエンスまで、中国が経済力にものを言わせ研究開発をリードし始めた。科学研究の未来を占うこの特集から、米中のAI開発競争に関する記事を掲載する>

筆者の1人は、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)で司令官を務めた。もう1人は、エネルギーや金融、国防システムで使われるAI(人工知能)技術を開発している。

AIが戦争をどのように変えつつあるのか、私たちは文字どおり目の当たりにしている。軍事だけではない。社会と経済の大半の分野で、AIが最大の競争優位性を手にする日は近い。

アメリカはAI誕生の地であり、この分野の重要な革新や大多数の研究機関を擁する。ただし、世界のライバルもすぐ後ろに迫っている。

中国は数十億ドルを投じて、30年までにAI分野で世界をリードするという目標を掲げている。ロシアが開発している次世代型戦闘機ミグ41はAIを搭載した超音速迎撃機で、最高時速は7200キロを超える見込みだ。

冷戦時代の宇宙開発競争に、アメリカは国家として熱意を注ぎ込んだ。現在のAI開発競争にも劣らぬ情熱で取り組まなければ、失うものは国のプライドどころではない。

アメリカがどの分野で遅れているかは、コンピューターで計算するまでもない。国の重要課題にAIは含まれず、科学技術関連の予算は削減され、移民の制限はあらゆる分野の競争力を損なっている。手遅れになる前に軌道修正するべきことを、4つの観点から考えてみたい。

■米国内の研究者の革新性を後押ししてきた開放的な環境は、一方で彼らの発見が確実に保護される前に公表されてしまうジレンマをもたらしている。米企業の特許申請のプロセスを迅速化するとともに、知的所有権を侵害する外国企業に対抗できるよう、政府が支援することも必要だ。

■AI技術の流出を阻止するための規制は、自らの競争力の低下と背中合わせでもある。例えば、アメリカは暗号化技術と基本的なプロセッサの輸出を規制している。サウジアラビアやパキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコなどの同盟国が、対テロ戦争においてアメリカ製の無人飛行システムへのアクセスを求めているが、申請に時間がかかったり、却下されることも多い。その結果、市場のほぼ全てを中国の輸出業者や現地の開発業者に奪われている。

■ディープラーニング(機械学習の一種)の研究論文の数は中国が世界で最も多く、スーパーコンピューターでもアメリカは遅れている。現政権の予算案はAI関連を削減しているが、もっと多くの公共投資が必要だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、米国でセダンEV2車種の開発計画を中止 需要

ビジネス

トランプ関税で「為替含め市場不安定」、早期見直しを

ワールド

中国は自由貿易を支持する─G20会合で人民銀総裁=

ワールド

世銀、インド成長率予想を6.3%に下方修正 世界的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中