最新記事
SDGsパートナー

使われなくなった製品を回収・修理し、次の使い手へ...土屋鞄製造所が体現する「つくる責任、つかう責任」

2024年11月15日(金)17時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

収益性のある仕組みで「長く」続けていく

土屋鞄製造所の修理職人が引き取り製品を修理(ミシン縫製)している様子

修理職人が引き取り製品を修理(ミシン縫製)している様子

「TSUCHIYA REUSE」の着想を得たのは2016年。修理の窓口である修理受付課には、修理だけでなく購入後の使い方やケアの仕方などの問い合わせも寄せられており、購入後のアフターサポート全般を担っていると感じたことがきっかけだ。

「もっとユーザーのために出来るアフターサポートはないかと考え、職人による修理技術や、直営の販売スタッフ・販売チャネルという私たちの持つ強みを活かしたこの取り組みにたどり着きました。何らかの形で使わなくなった自社の製品が二次流通に流れるのではなく、自分たちの手で回収し、最後まで責任を持つことで、お客さまとの繋がりを大切にしたいと考えています」と、笹田氏は語る。

そこから構想をまとめ、実際にプロジェクトが発足したのは2021年。初めての引き取りキャンペーンの際には、100点の引き取りが目標だったところに600点弱の製品が集まるなど予想を上回る結果に。現在までの累計の引き取り数は約1900点、再販売数は約900点と好評を博している。

さらに、鞄のリユースについては、単体での収益性がないといずれ継続が難しくなることを想定し、初年度から単体で収益が出るような経済的仕組みを構築した。

具体的には、不要になった鞄を無料で引き取る代わりに、定価の20%(2024年より10%に改定)に相当する割引クーポンを発行するというものだ。実際に初年度は約8割の顧客がクーポンを利用し、新たな製品の購入に至っており、継続的な取り組みに繋がっているという。

また、土屋鞄製造所では長年培ってきた修理技術をより多くの人の愛用品に活かしたいという想いから、11月15日からは自社製品の修理サービスに加え、他社ブランド製品についても一部メニューで修理サービスの受付を開始する。

ただ製品をつくって売るだけでなく、その後の製品の使われ方や顧客のニーズを考えた「TSUCHIYA REUSE」。収益性も考慮することで持続可能性も実現しており、 まさにSDGsのゴール「つくる責任、つかう責任」を体現した取り組みと言えるのではないだろうか。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中