最新記事
SDGsパートナー

「電力99.9%削減、CO2排出量97.3%削減」山一金属が目指す、究極のアルミ缶リサイクルへの挑戦

2024年10月4日(金)11時12分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

電力由来のCO2排出をゼロに、「リサイクルファースト」の価値観を共創

山一金属のリサイクルの大きな特徴は「分離技術」にある。

newsweekjp_20241003084358.png

異なる性質のアルミで作られているアルミ缶の胴体と蓋。山一金属は2種類のアルミを分離する技術を開発する

アルミ缶はまるごと同じ素材でできているように見えるが、実は、胴体と蓋は別々のアルミ合金が用いられている。軽さと耐久性が求められる胴体にはマンガンが、堅さが求められる蓋にはマグネシウムが多く含まれているのだ。これを混ぜたままリサイクルすると、性質が変わってしまい、原料としての用途が狭まってしまう。

しかし、山一金属はリサイクルプロセスに数十箇所の異物選別を用意することで、不純物のほとんどないアルミ原料に戻すことを可能とした。高精度な選別によって、アルミ以外の金属やアルミ灰なども、産業廃棄物として処分するのではなく、副産物として活用できるものにしている。

リサイクル段階で純度の高い原料に戻すことができれば、再度の製造時においても、新しいアルミや添加金属の使用量を削減することができるため、環境負荷の削減効果は高い。

さらに山一金属では、CO2排出削減の取り組みを複合的に進めている。再生可能エネルギー由来の電力を使うことによって、2026年までにはすべての工場で、電力由来のCO2排出をゼロにする計画だ。

目指しているのは「究極のアルミ缶づくり」だと、専務取締役 大賀丈久氏は語る。

「空き缶だけで新しいアルミ缶をつくることが、本プロジェクトの究極の目標です。それができれば、ボーキサイトから精錬する必要もなくなり、環境負荷を大幅に減らすことができるでしょう。そのためには、技術開発だけでなく、『リサイクルファースト』の価値観を共創していくことが必要です。日本だけでなく、世界中でアルミ缶が『エコな容器』だと思ってもらえるように、チャレンジを続けていきます」(大賀氏) 

アルミ缶のリサイクルを通じて、複合的な社会課題に取り組む山一金属のプロジェクトは、資源循環型社会の実現を目指す国際社会における、日本発の付加価値の高い技術的な貢献となりそうだ。

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ワールド

香港北部の高層複合アパートで火災、4人死亡 建物内

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中