「電力99.9%削減、CO2排出量97.3%削減」山一金属が目指す、究極のアルミ缶リサイクルへの挑戦
サプライチェーン全体でのリサイクル付加価値の向上や、人々の環境マインドの醸成は環境先進国・日本に向けた喫緊の課題だ
<持続可能な社会の実現には、複合的な取り組みが欠かせない。山一金属株式会社は、CO2排出削減や廃棄物の有効活用、アルミ缶の分離技術向上などを掛け合わせることにより、環境負荷を極限まで減らした先進的なアルミ缶づくりに挑んでいる>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
SDGsは17の異なる目標で構成されているが、それぞれは独立しているわけではない。すべての目標は相互に関連しあっている。たとえば、エネルギー使用の効率化によって、CO2排出削減と持続可能な経済的発展、両方に貢献することが可能だ。むしろ、複数の課題に同時に取り組むことが、シナジーを発揮するのである。
山一金属の「持続可能なリサイクルアルミ製造プロジェクト」はその好例だ。40年前からアルミのリサイクルに取り組む同社は、工場のCO2排出削減や、廃棄物の有効活用、アルミ缶の分離技術の向上といった取り組みを通じて、環境負荷の低減と資源循環を両立できる製造プロセスの構築を進めている。
「リサイクルの優等生」アルミが持つさらなる可能性
アルミニウムは、軽量性や耐腐食性に優れ、加工がしやすいことから、さまざまな場面で利用されている金属だ。アルミ缶にはもちろんのこと、スマホの筐体や自動車のボディなどにも広く用いられている。
通常、ボーキサイトという鉱石からアルミは精錬されるが、このとき、大量の電気を必要とするほか、「赤泥」と呼ばれる汚染物質が生じてしまう。
その点、リサイクルならば電力を大幅に削減できる上に、赤泥を発生させずに済む。また、アルミはリサイクルを繰り返しても、ほとんど劣化しない素材でもある。「リサイクルの優等生」と言われる所以だ。
山一金属では、アルミを溶解しないリサイクル技術を確立し、ボーキサイトから作る際に比べて、「電力99.9%削減」「CO2排出量97.3%削減」を達成している。日本で消費されるアルミ缶は年間約220億本。このうちの約15%、30億本を、同社は環境負荷の少ないかたちでリサイクルしている。