コーヒー製造の「もったいない」を食品ロス削減の啓発プログラムに活用...三本珈琲が繋ぐ未来へのバトン
啓発活動によって広がるSDGs推進の輪
コーヒー製造時の副産物には、食品ロスの他にコーヒー生豆を海外から運ぶ際に使用する麻袋や、コーヒー焙煎時に発生するコーヒー豆の薄皮「シルバースキン」など植物性廃棄物も多く発生する。
これらを活用し、同社は3つの体験型啓発プログラムを開発した。一つは、製品には使えない「もったいない」コーヒー豆を使用し、オリジナルのブレンドコーヒーを作る体験。
もう一つは、コーヒー麻袋を地域の服飾専門学校に依頼してバックに加工し、絵の具でペイントしてオリジナルバックをつくる体験。
いずれも体験を通して「もったいない」を愛着の湧く「オリジナルの宝物」に変え、問題を「自分ごと化」するような試みだ。
そして、3つめはシルバースキンの有効活用だ。シルバースキンはもともと動物園の獣舎などで敷材として活用されるのが主な再利用用途だったが、シルバースキンを練りこんだパンを販売するなど食用利用を推進している。
食べ物を食べ物として工夫して使いきることの面白さ、大切さを伝えることが目的で、これは家庭でも応用できる場面が多く、将来世界的な食料不足が懸念されている中、このような工夫を一人ひとり が実践する小さな行動の積み重ねが食品ロス削減、食料確保には重要となる。
これらの体験を通して「明日からではなく今すぐに具体的に行動することの大切さ」「今、そばにあるものを工夫して使うことの楽しさ、大切さ」を、特に、未来を創る子どもや若者たちに伝えたいと三本珈琲は考えている。
またこのような活動を機に、コーヒーや食品と直接関係のない異業種企業との交流も生まれており、組織同士の相互啓発によりSDGs推進の輪がさらに大きく広がっているという。
「こうした連携こそが、持続可能な世界の実現への一歩だと実感しています。一人の人間ができることに限りがあるのと同じように、一企業で成しえることにも限界があります。一粒のコーヒーを起点として思いもよらないところまで広がる連携の輪で世界があっと驚く変革を起こす、それを未来の世代に正しく伝え、次の変革のバトンを渡していく、これが最も重要であると考えています」と、正木氏は話す。
三本珈琲は2030年までに「工場の生産活動で排出される廃棄物実質0」、「食品ロス削減量を2021年からの累計で300トン」を製造部門の数値目標とし、パートナーシップの力で達成することを目指している。
2015年9月、ニューヨーク・国連本部、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にはこう記されている。「人類と地球の未来は我々の手の中にある。そしてまた、それは未来の世代にたいまつを受け渡す今日の若い世代の手の中にもある。」
一粒のコーヒーが繋ぐ未来へのバトンは大きなたいまつとなり、未来の世代が歩む道を明るく照らしてくれることだろう。
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