トマトジュースで生産も消費も持続可能に。生活クラブが進める新しい農業モデル
完熟した加工用トマト 地面に這うように実がなるのが特徴。真っ赤に完熟したものを収穫する
<農業従事者の高齢化と労働力不足が進む中、生活クラブは組合員がトマトの定植や収穫に参加する「計画的労働参加」を通じて、持続可能な農業を支援し続けている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
農業・林業・水産業などの第一次産業では、働き手の高齢化と労働力不足が深刻化している。農業を主な仕事としている人の数は、2005年から2020年の15年間で39%も減少した。
「トマト農家」も同様だ。トマトケチャップやトマトジュースの原料となる加工用トマトは、かつて、そのほとんどが国内で生産されていた。しかし、1980年代の輸入自由化で栽培面積が大幅に減少。さらに近年は、気候変動が追い打ちとなって、生産量は右肩下がりとなっている。
こうした課題の解決に挑んでいるのが、全国21の地域で宅配生協を展開する「生活クラブ」だ。
安心な食材を守るために、「消費者」を超えた農業支援
生活クラブは、1965年に設立された生活協同組合。「持続可能で、家族が安心して食べられるもの」を、長年にわたり生産者とともに追求してきた。今では、扱う品物のほとんどが生活クラブのオリジナル品だ。
なかでも「信州トマトジュース」は、持続可能な生産・消費を実現する成果のひとつだ。
加工用トマトは、実が鈴なりになる生食トマトとは違い、地を這うように実る。真っ赤に完熟してから収穫するが、その時期は真夏だ。炎天下のなか、中腰で延々と作業しなければならない。
そこで生活クラブは、組合員が苗植え・収穫に協力する「計画的労働参加」を1995年にスタートした。
もともと、特定の時期に集中して作業が必要な農業は、コミュニティ内で労働力を融通し合うことで成り立ってきた。農家が減ってきた今、生活クラブという新たなコミュニティが人手を補う仕組みだ。2024年の加工用トマト収穫には、のべ114名が収穫に参加した。