生産に関わる時間・空間・距離・在庫を「半分に減らす」オムロン松阪事業所の生産性改革
他にもSMT(表面実装)ラインでは、リフロー炉の待機時間を有効活用する取り組みも進んでいる。リフロー炉とは基板に印刷されたはんだを熱で溶かして部品と接着させる装置だが、稼働状況とエネルギー消費量を時系列で見える化したところ、稼働時はもちろん、待機時間にも炉内を高温に保つために大量のエネルギーを消費していることが分かった。
これを受けて、基板の投入を平準化。待機中のエネルギーも熱源として利用することで、生産性を高めている。
同社は今年4月、一連の取り組みによってSMTラインで使用する基盤実装機のエネルギー消費量を0.8倍、生産量を1.4倍にし、エネルギー生産性を1.75倍に高めることができるという試算をメディア向け発表会で示した。基板1枚当たりの温室効果ガス排出量は43%削減できるという。
再生可能エネルギーで稼働する事業所に
松阪事務所のカーボンニュートラルプロジェクトでは、部品調達を海外から国内に切り替えることで輸送距離の短縮を図る物流改革も行なっている。
ほかにエネルギーを創出する取り組みとしては、同事業所の屋上に太陽光パネルを設置している。将来的には事業所外にも太陽光発電所を新設し、発電した電気を事業所に供給する予定だという。再生可能エネルギーによる全面稼働もそう遠い話ではないだろう。
また、温室効果ガスを吸収する森林の存在もカーボンニュートラルには欠かせない。事業所の所在地である三重県は、木を育て、木材として活用し、また育てるという「緑の循環」を推進。同社も地元自治体と連携し、森林の保全活動に力を入れている。
これらは同社のSDGsの取り組みの一例であり、東洋経済新報社が毎年発表している「SDGs企業ランキング」では2年連続(2021年・2022年)で1位に輝いた。
アメリカのバイデン大統領は2021年4月に開催された気候変動サミットの開会の挨拶で、2030年までを気候変動対策の「勝負の10年」と述べた。日本でも2022年2月に経済産業省が「GXリーグ基本構想」を公表し、環境問題解決のための取り組みを経済成長の機会にしようとするGX(グリーントランスフォーメーション)が盛んになってきている。
テクノロジーを駆使してエネルギー消費と時間の無駄を一挙に解消する松阪事業所のプロジェクトは、社会への責任を果たしつつ自社の競合優位性を高める、日本を代表する取り組みと言っていいだろう。
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