最新記事
SDGsパートナー

生産に関わる時間・空間・距離・在庫を「半分に減らす」オムロン松阪事業所の生産性改革

2024年1月10日(水)15時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

omron_2.jpg

SMT(表面実装)ラインの「見える化」

他にもSMT(表面実装)ラインでは、リフロー炉の待機時間を有効活用する取り組みも進んでいる。リフロー炉とは基板に印刷されたはんだを熱で溶かして部品と接着させる装置だが、稼働状況とエネルギー消費量を時系列で見える化したところ、稼働時はもちろん、待機時間にも炉内を高温に保つために大量のエネルギーを消費していることが分かった。

これを受けて、基板の投入を平準化。待機中のエネルギーも熱源として利用することで、生産性を高めている。

同社は今年4月、一連の取り組みによってSMTラインで使用する基盤実装機のエネルギー消費量を0.8倍、生産量を1.4倍にし、エネルギー生産性を1.75倍に高めることができるという試算をメディア向け発表会で示した。基板1枚当たりの温室効果ガス排出量は43%削減できるという。

再生可能エネルギーで稼働する事業所に

松阪事務所のカーボンニュートラルプロジェクトでは、部品調達を海外から国内に切り替えることで輸送距離の短縮を図る物流改革も行なっている。

ほかにエネルギーを創出する取り組みとしては、同事業所の屋上に太陽光パネルを設置している。将来的には事業所外にも太陽光発電所を新設し、発電した電気を事業所に供給する予定だという。再生可能エネルギーによる全面稼働もそう遠い話ではないだろう。

また、温室効果ガスを吸収する森林の存在もカーボンニュートラルには欠かせない。事業所の所在地である三重県は、木を育て、木材として活用し、また育てるという「緑の循環」を推進。同社も地元自治体と連携し、森林の保全活動に力を入れている。

これらは同社のSDGsの取り組みの一例であり、東洋経済新報社が毎年発表している「SDGs企業ランキング」では2年連続(2021年・2022年)で1位に輝いた。

アメリカのバイデン大統領は2021年4月に開催された気候変動サミットの開会の挨拶で、2030年までを気候変動対策の「勝負の10年」と述べた。日本でも2022年2月に経済産業省が「GXリーグ基本構想」を公表し、環境問題解決のための取り組みを経済成長の機会にしようとするGX(グリーントランスフォーメーション)が盛んになってきている。

テクノロジーを駆使してエネルギー消費と時間の無駄を一挙に解消する松阪事業所のプロジェクトは、社会への責任を果たしつつ自社の競合優位性を高める、日本を代表する取り組みと言っていいだろう。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、政府閉鎖中も政策判断可能 代替データ活用=

ワールド

米政府閉鎖の影響「想定より深刻」、再開後は速やかに

ビジネス

英中銀の12月利下げを予想、主要金融機関 利下げな

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が語る「助かった人たちの行動」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中