生産に関わる時間・空間・距離・在庫を「半分に減らす」オムロン松阪事業所の生産性改革
生産に関わる時間・空間・距離・在庫を半分に減らす「All in half」の発想で運営されている松阪事業所
<人と機械がお互いの強みを生かして協業すれば、エネルギーと時間の無駄を削減しつつ生産量を増やすことが可能に>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
2022年、事業のエネルギー効率を倍増させることを目標に掲げる企業が参画する国際イニシアチブ「EP100」に、4社目の日本企業として加盟したオムロン株式会社。製造業においては国内で初の参加となった。そんな同社の松阪事業所で行われている、エネルギー生産性を追求する取り組みとは──。
エネルギー消費量を減らし、生産量を増やすためには
2020年10月26日、菅義偉首相(当時)は国会での所信表明演説で、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを意味する。排出を完全になくすことは難しいため、排出された分を「吸収」または「除去」して、差し引きゼロを目指すという表明だ。
京都市に本社を置く大手電気機器メーカーのオムロン株式会社も、カーボンニュートラル実現のために積極的に活動する企業の一つだ。ヘルスケア事業(オムロン ヘルスケア株式会社)の拠点で国内の生産を担う松阪事業所(三重県)では、温室効果ガス排出量の削減と事業成長の両立を目指すさまざまな取り組みが進められている。
消費エネルギーを減らすことでCO2の排出を減らす。代わりとなるクリーンなエネルギーを創り出して利用する。なおも減らしきれないCO2は吸収することで、排出を実質ゼロにする──これが血圧計や体温計などの生産を担う松阪事業所のカーボンニュートラルプロジェクトだ。
同事業所では、オムロンのデータ活用基盤「i-DMP(i-BELT Data Management Platform)」を用いて稼働状況を徹底的に「見える化」する。事業所全体と製品1台あたりの温室効果ガス排出量などを可視化することで、エネルギー消費量を減らしながら生産量を増やすことをミッションとする従業員のモチベーション向上にもつながっている。
例えば血圧計の生産ラインでは、LCIA(Low Cost Intelligent Automation)自動機と呼ばれる機械を導入。これまで主に作業員の手で行われてきたはんだ付けも、機械に任せられるようになった。
これにより、同じ量の製品を1ライン減らして生産できるようになり、空いた空間の照明・空調の省エネに生かしている。さらに照明や空調の人感センサによる自動制御にも取り組んでいる。
こうした施策は、「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべき」という創業者・立石一真氏の唱えた経営理念を反映したものでもある。