ボイセンベリーがつなぐ、シーエスラボの耕作放棄地活用と地域創生の挑戦とは?
「ミラクルベリー」と言われるボイセンベリーはいまや館林の名産品に
<なぜ化粧品会社がキイチゴの一種ボイセンベリーで地域社会を再生したのか? そこには厳しい気候と高齢化による耕作放棄地が背景にあった>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
戦後、約9割を誇った日本の食料自給率はその後、緩やかに割合を下げ、2000年代には4割、そして2018年には過去最低の38%を記録した。世界各国と比較しても格段に低い食糧自給率は長年、問題になってきたが、その原因の大きな1つが、高齢化による農業生産者の減少とそれに伴う耕作放棄地の増加といった、農業の衰退が挙げられる。
そんななか耕作放棄地を利用し、キイチゴの一種ボイセンベリーを栽培する取り組みが注目されている。
ボイセンベリーがつないだ、地域住民の連携
群馬県にある化粧品OEMメーカーのシーエスラボは耕作放棄地を借り上げて、群馬県立館林高等特別支援学校の生徒たちとともにボイセンベリーを育てている。しかし、なぜ化粧品メーカーがそもそも農業に従事しているのか?
「ミラクルベリー」と呼ばれるボイセンベリーはアントシアニンの含有量が多く、老化防止の効果が期待され、料理だけでなく、健康食品や化粧品の成分としても注目される健康果実。しかし、収穫量の少なさと販路が限られていることから国内では流通しづらい事情がある。そんな中でボイセンベリーを地域の特産品にしようと考えたのが、地元の化粧品メーカーのシーエスラボであった。
群馬県はからっ風や日照時間の長さ、そして山間部から平地までの高低の変化の大きさから温度や湿度の点で肌に厳しい環境である。そのため、同社は化粧品メーカーとして地域に貢献できる方法を模索していたときに目をつけたのが、この健康果実であった。
農業王国である群馬県も例にもれず、高齢化から農業の担い手が激減しており、耕作放棄地が大きな課題となっていた。そこで若い世代にも農業の魅力を知ってもらうべく、生産団体と連携。地元の特別支援学校と協力して教育支援の一環としてもボイセンベリーをともに栽培する取り組みを始めた結果、今では生徒と農家が中心となって農業を通した連携が地域社会に生まれている。