大量廃棄が予測される太陽光パネルを再資源化 宮城衛生環境公社が「エコロジーセンター愛子」に込めた願い
使用済み太陽光パネルを処理・再資源化するPVリサイクル事業を行う施設「エコロジーセンター愛子」
<社会に不可欠でありながら、偏見を持たれがちな「静脈産業」企業として脱炭素経営に着手。同社が目を向けたのは、太陽光発電設備が抱える課題だった>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
市民のライフラインを担う事業として、ごみ収集や産業廃棄物処分を手がける株式会社宮城衛生環境公社。再生可能エネルギー普及への機運が高まるなか、使用済み太陽光パネルの処理をめぐる懸念も広がっているが、その課題解決のため専用のリサイクル施設を建設した。そこには「静脈産業」企業としての、ある想いがあった。
迫りくる「太陽光パネルの大量廃棄」という社会課題
「静脈産業」という言葉がある。製品を生産するメーカーなど「動脈産業」に対し、消費が終わった製品や不用品を回収し、それらを処理、再加工したり資源に変えたりして市場に再投入する事業を指す。
社会に不可欠な産業であり、近年は例えば製品の環境負荷ひとつ取っても、原材料調達から製造、使用、廃棄・リサイクルまでを一貫して定量化する手法が広まるなかで、より一層重要度が増しているとも言える。しかし、ごみ処理場の建設計画にしばしば反対運動が起こるなど、市民からは温かな目で見られないことが多い産業でもある。
株式会社宮城衛生環境公社は、そんな静脈産業企業の1社だ。家庭ごみや事業ごみの収集、産業廃棄物処分などを手がける同社は今年4月、仙台市内に使用済み太陽光パネルのリサイクル施設「エコロジーセンター愛子(あやし)」を開設した。その背景にはある想いがあったと、代表取締役の砂金英輝氏は言う。
「決してスマートできれいな仕事として見られませんが、市民生活には欠かせないライフラインと言える仕事です。新型コロナウイルスが蔓延した時期にも、雨の日も風の日も衛生環境を守るために責任を持ってごみの収集を行いました。美しい街並み、美しい景観を守っている人々がいることを分かってほしい。そのためには、企業としての正しい姿勢と行動を多くの方々に知っていただきたいと思っています」
折しも日本では、再生可能エネルギーの導入が急ピッチで進んでいる。その促進のため経済産業省は2012年、再エネから作られた電気を電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保証する「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」を開始した。
同制度で定められた容量10kW未満の太陽光発電の買い取り期間は10年間。そのため近く制度が満了を迎える家庭や事業所も少なくなく、適用期間が過ぎると売電収入が大幅に下がるため、発電を終了して太陽光発電設備を解体・撤去するケースが増える見込みだ。加えて、太陽光パネルの製品寿命という問題もある。
この問題にどう対処するか? 静脈産業企業としての正しい姿勢と行動、脱炭素経営に舵を切っていた宮城衛生環境公社は、太陽光パネル専用のリサイクル施設建設を決意する。