最新記事
発達障害

手に負えないのはADHDだから? 家族に順位を付け、父親を「君づけ」で呼ぶ不登校小6男子の場合

2024年6月17日(月)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

もともとJ君の家では、ゲームは一日1時間半までというルールがありました。

ルールを守ってきたJ君でしたが、次第に祖父宅で何時間もゲームをするようになりました。そのうち、祖父宅に泊まり、朝までゲームをしたり、動画を見たりと、エスカレートしていきました。欲しいゲームがあると祖父と一緒に買い物に行き、好きなだけ買ってもらうようになりました。

外食のときには、自分で注文した料理を「やっぱりおいしくなさそうだから、別の物を食べたい」とわがままを言い、それを見た祖父が「もうひとつ別のものを注文してやれ」というため、J君が最初に注文した料理は、代わりに父親が食べるようになりました。

家族の誰も止めない増長ぶり

祖父は絶対的な存在であり、どんなにJ君を甘やかそうと、両親は異論を唱えることができませんでした。そのため、J君はいつも祖父を使って自分のわがままを通すようになり、自分の両親との約束はなんとも思わなくなっていきました。

家の中で一番偉いのは祖父で、二番目は祖父に溺愛されている自分。さらに祖母、母親、父親と順位付けをしていました。

キャッチボールをしていたとき、「そろそろ終わりにしよう」と言った父親に腹を立て、庭のホースで水をかけたこともありました。それでも、気弱な父親が自分の息子を叱責することはありませんでした。父親だけでなく、家族の誰もJ君の増長を止めません。

欲求をすべて満たし、「自分は父親よりも偉い」と考えていたJ君でしたが、一方で「いつかしっぺ返しがくるかもしれない」という恐れや怖さが心の中に生じるようになっていました。

それまで大きな問題もなく勉強や運動に取り組んできたのに、祖父の家の敷地内に引っ越したことをきっかけに、世代間の境界が混乱し、J君の家族の秩序は壊れ始めました。

年齢相応の我慢や努力をせず、幼児的な欲求を通し続けてきたことで、学校でも自分勝手な行動を繰り返し、やがて不登校につながってきたことは理解できました。

不注意や多動性、衝動性とされた症状も、環境の変化の影響が大きいだろうと私は考えました。そこで、今の混乱した家族関係を整理し、J君に対して年齢相応の対応をするための親ガイダンスを提案し、両親もそれを希望しました。

祖父を使って両親との約束を破ること

親ガイダンスでは、祖父への対応が重要なポイントになりました。

J君は「虎の威を借る狐(きつね)」状態であり、祖父の権威を借りて父と母を言いなりにさせて幼児的な欲求を満足させていました。わがままで我慢のきかない、自分勝手な幼児のようになっています。このままでは、年齢相応の努力や我慢を学ぶことができず、友達とも対等な関係が築けなくなるはずです。

そして私は、「祖父を使って両親との約束を破ることは、J君の心の中に満足感とともに恐れや罪悪感も生み出すことになります」と伝えました。ここを解決しないと、将来、J君自身が困難を背負い込むことになることも話しました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア・ウクライナ復活祭停戦、双方が違反を非難 ド

ワールド

米軍、13日からイランの港に出入りする船舶封鎖へ

ワールド

トランプ氏「米軍がホルムズ封鎖へ」、イランは海峡接

ワールド

米イラン協議決裂、核・ホルムズ海峡で溝埋まらず 停
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中