手に負えないのはADHDだから? 家族に順位を付け、父親を「君づけ」で呼ぶ不登校小6男子の場合
もともとJ君の家では、ゲームは一日1時間半までというルールがありました。
ルールを守ってきたJ君でしたが、次第に祖父宅で何時間もゲームをするようになりました。そのうち、祖父宅に泊まり、朝までゲームをしたり、動画を見たりと、エスカレートしていきました。欲しいゲームがあると祖父と一緒に買い物に行き、好きなだけ買ってもらうようになりました。
外食のときには、自分で注文した料理を「やっぱりおいしくなさそうだから、別の物を食べたい」とわがままを言い、それを見た祖父が「もうひとつ別のものを注文してやれ」というため、J君が最初に注文した料理は、代わりに父親が食べるようになりました。
家族の誰も止めない増長ぶり
祖父は絶対的な存在であり、どんなにJ君を甘やかそうと、両親は異論を唱えることができませんでした。そのため、J君はいつも祖父を使って自分のわがままを通すようになり、自分の両親との約束はなんとも思わなくなっていきました。
家の中で一番偉いのは祖父で、二番目は祖父に溺愛されている自分。さらに祖母、母親、父親と順位付けをしていました。
キャッチボールをしていたとき、「そろそろ終わりにしよう」と言った父親に腹を立て、庭のホースで水をかけたこともありました。それでも、気弱な父親が自分の息子を叱責することはありませんでした。父親だけでなく、家族の誰もJ君の増長を止めません。
欲求をすべて満たし、「自分は父親よりも偉い」と考えていたJ君でしたが、一方で「いつかしっぺ返しがくるかもしれない」という恐れや怖さが心の中に生じるようになっていました。
それまで大きな問題もなく勉強や運動に取り組んできたのに、祖父の家の敷地内に引っ越したことをきっかけに、世代間の境界が混乱し、J君の家族の秩序は壊れ始めました。
年齢相応の我慢や努力をせず、幼児的な欲求を通し続けてきたことで、学校でも自分勝手な行動を繰り返し、やがて不登校につながってきたことは理解できました。
不注意や多動性、衝動性とされた症状も、環境の変化の影響が大きいだろうと私は考えました。そこで、今の混乱した家族関係を整理し、J君に対して年齢相応の対応をするための親ガイダンスを提案し、両親もそれを希望しました。
祖父を使って両親との約束を破ること
親ガイダンスでは、祖父への対応が重要なポイントになりました。
J君は「虎の威を借る狐(きつね)」状態であり、祖父の権威を借りて父と母を言いなりにさせて幼児的な欲求を満足させていました。わがままで我慢のきかない、自分勝手な幼児のようになっています。このままでは、年齢相応の努力や我慢を学ぶことができず、友達とも対等な関係が築けなくなるはずです。
そして私は、「祖父を使って両親との約束を破ることは、J君の心の中に満足感とともに恐れや罪悪感も生み出すことになります」と伝えました。ここを解決しないと、将来、J君自身が困難を背負い込むことになることも話しました。