最新記事
健康ライフ

「高齢者は粗食にしたほうがよい」は大間違い、肉を食べないとがんのリスクが上がる理由

2024年5月8日(水)18時43分
和田 秀樹 (精神科医)*PRESIDENT Onlineからの転載

【昭和50年代から肉を増やすのをやめた】

ところが、75年(昭和50年)くらいから、身長の伸びも頭打ちになってきました。それは決して、栄養状態がピークに達したからではありません。

同じ頃に言われ出したのが「肉の食べすぎは体によくない」でした。肉を摂りすぎると、心臓や血管にダメージを与えると言われるようになってきたからです。

そこから、「肉は減らそう」と言われるようになってきたのです。この根拠とされたのが、アメリカでの研究でした。

その頃のアメリカ人の食生活というと、300g以上の牛ステーキを平気でペロリと平らげているような時代です。

それに対し、日本人は1日70gぐらいしか肉を食べていません。私に言わせれば、むしろ日本人はもっと肉は食べないといけなかったのです。

それなのに、日本の医者たちも、「アメリカの医学の最新研究が肉を減らせといっているんだから、日本人も減らすべきだ」と言い始めたので、もうそれ以上、食べる肉の量が増えることはあまりなくなってしまいました。

今も変わっていませんが、日本ではアメリカ医学は何でも正しいということになっています。日本の医学は、いまだにアメリカ礼賛なのです。

【肉を食べないとがんのリスクが上がる】

アメリカ人と日本人では、もともとの体質も食生活も異なります。寿命を延ばすための対策も違って当然です。

何しろ日本人の死因の1位はがんなのに対し、アメリカ人の死因のトップは心筋梗塞などの虚血性心疾患です。

日本はがんで死ぬ国なのに、心筋梗塞で死ぬ国のデータを持ってきても、あてになるはずがありません。

アメリカが心筋梗塞で死ぬ人がもっとも多いのは、肥満が多いからです。それも日本人の感覚からしたら超肥満です。

BMI(肥満指数)という値があります。体重(kg)を身長(m)の二乗で割って求められる数値ですが、これが25以上だと日本では肥満ということになっています。

ところが国際的には30以上が肥満となっていて、この基準にあてはまる肥満がアメリカでは30%以上もいるのに対し、日本で同じ基準の肥満の人は3%しかいません。

BMI30がどのくらいかというと、身長が170cmの人なら、89kgで30を超えます。アメリカではこのくらいの肥満の人が、10人のうち3人もいるわけです。

このデータが日本人にあてはまるわけがないでしょう。

このような肥満の人はコレステロール値が高くなって、動脈硬化が進みやすく、心臓の血管が詰まって心筋梗塞を起こしやすいとされています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中