最新記事
ヘルス

「野菜ファースト」はダメ絶対! 日本の高齢者5人に1人が不足、食事で初めに口にすべきものは?

2023年9月8日(金)19時30分
和田秀樹(精神科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

ミートファーストを始めたら、気がつくとセロトニンの材料となるトリプトファンというアミノ酸を肉からしっかり摂取し、幸せと意欲が向上しています。うつうつとした気分とはおさらばです。

肉はコレステロールが多いから、動脈硬化がこわいといって、あまり食べない人もいますが、日本は心筋梗塞の12倍の人ががんで亡くなる国です。心疾患で亡くなる人は、OECD諸国の中でも格段に少ないのが現状です。

コレステロールは、セロトニンを脳に運ぶ役割を果たしています。肉を食べると幸せになるのです。

80歳のときに3度目のエベレスト登頂に成功したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは、80歳を過ぎても500gのステーキを平らげているそうです。

70代前半までは認知症よりうつ病の人

次のような症状はありませんか?

「食欲がない」
「最近、やる気が起きない」
「夜、何度も目が覚める」
「疲れやすく、すぐに横になってしまう」
「朝早く目が覚めてしまう」
「喜怒哀楽の感情が乏しい」
「元気が出ずボーっとしてしまう」

若いころはこんなことはよくありました。しかし、みなさんがこのような症状があれば危険です。

こうなると、家族が認知症を心配して、一緒に私の病院にやってきます。来院された方にまず最初に私がお聞きする質問はふたつです。

「食欲はありますか?」
もしも、「何を食べてもおいしくない」とか、「食欲がわかない」「食が細くなった」という場合は、認知症よりもうつ病の可能性が高いと診断します。

「ちゃんと眠れていますか?」
もしも「夜中に何回も目を覚ます」という場合は、うつ病の可能性が高いと診断します。寝つきは悪くないが眠りが浅い熟睡障害は、うつ病による不眠の典型的な症状です。

実際に、認知症とうつ病は見分けがつきにくいのが特徴です。

うつ病は、70代以降の人が一気に老け込む要因です。そのまま放っておくと、徐々に運動機能と脳機能が衰え、あっという間によぼよぼになってしまいます。

高齢者は、脳内物質のセロトニンが減ってしまい、うつにかかるリスクが高まります。じつは70代の前半くらいまでは、認知症の人よりうつ病の人のほうが多いのです。

夏場にタンパク質不足で発症するケースも

和田秀樹「やせてはいけない!」どうしてうつ病になってしまうのでしょうか。大きく心因と身体因のふたつあります。

心因は、定年退職や子どもの独立、引っ越しといった環境の変化やパートナーの死、ペットの死、コロナ禍で習い事に行けないなど、心の拠(よ)り所を失ったとき。

身体因は、食事が偏って「かくれ栄養失調」になっていたり、外出しないために幸せホルモンのセロトニンが不足した場合など、身体からきます。

夏場などあっさりした麺類ばかり食べていると、タンパク質不足でうつ病を発症するケースがあるのです。

高齢者の場合のうつ症状は、気分の落ち込みより、まずは身体化症状として現れるケースがよく見られます。

「身体がだるい」「食欲がない」「腰が痛い」「便が出ない」。

このような症状が身体化症状として見られるうつ病です。

「タンパク質ってそんなに大事なの?」「野菜を食べるほうが健康にいいんじゃないの?」「外出しないだけでセロトニンという幸せホルモンが減ってしまうの?」と驚かれたのではないでしょうか。

こんなときは陽の光をたくさん浴びましょう。朝、カーテンを開けて、太陽の光を浴びる。コンビニまでちょっと歩いて行く。こんなふうに意識して、陽の光を浴びるようにしてみてください。

食事をつくるのが面倒であれば、コンビニに行けばレンチンするだけですぐに食べられる栄養たっぷり、タンパク質豊富な食べ物がたくさん売られています。

「鶏肉と卵のサンドイッチ」「サラダチキン」「唐揚げ」「鮭の塩焼き」「鯖のみそ煮」などなど。この文字を読んだだけで、だんだん食欲がわいてきませんか?

視覚情報として目に入ってくると、それによって脳が刺激され、食欲がわいてくるものです。ぜひ外に出かけましょう。

展覧会
京都国立博物館 特別展「日本、美のるつぼ」 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中