最新記事
ヘルス

ダイエットする人に知ってほしい 減量を促し認知機能まで向上させるあの「脂肪」のすごい働きとは

2023年5月2日(火)19時10分
マックス・ルガヴェア(健康・科学専門ジャーナリスト)、ポール・グレワル(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

そして6年後、ナッツ類を補う食生活を続けたグループも、大量のオリーブオイルを補う食生活を続けたグループも、認知機能が低下していなかっただけでなく向上していた。

その傾向は、オリーブオイルをたくさん摂取したグループのほうが、わずかに高かった。一方、低脂肪の食生活を続けたグループは、明らかに認知機能が衰えていたという。

良質のEVOO(オーガニックが望ましい)の植物性の芳香や、咽喉の奥に感じるピリッとした辛味と仲よくなり、それを頻繁に味わおう! キッチンにはEVOOをいつもストックしておこう。加熱するときは、弱火から中火で調理しよう。

そして卵や野菜、魚、また、あらゆるサラダにソースとして使おう。

脂溶性ビタミンの吸収も促される

よい脂肪(卵、アボカド、脂質の多い魚、EVOOなどの高脂肪の食品)をもっと食事に加えた場合の、絶対に見逃せない利点に触れておこう。

このような脂質は、ビタミンAやビタミンE、ビタミンD、ビタミンKなど、脂溶性の必須のビタミンや、β-カロテンのような重要なカロテノイドの吸収を促してくれる。こうした栄養素はDNAの損傷を防いだり、体内にある脂肪を保護したり、脳を加齢から守ったりと、広範囲にわたる恩恵をもたらす。

カロテノイドは、ニンジンやサツマイモ、ルバーブ、またケールやホウレンソウなどの葉物野菜に豊富に含まれる黄色やオレンジや赤の色素で、脳の強力なブースターといわれている(濃い緑の葉物野菜のカロテノイドは、葉クロロフィル緑素の緑の色素によって隠れてしまうため目には見えないが、ちゃんとそこにある)。カロテノイドのうち、ルテインとゼアキサンチンは神経系の働きを改善し、「結晶性知能」、つまり人が一生のあいだに獲得していく技能や知識を適用する能力とも関連があるという。

カロテノイドを血液中に入れるには、脂肪と抱き合わせにする必要がある。

たとえばサラダを食べる場合、脂質を含む食品と一緒に食べないと、カロテノイドはごくわずかしか吸収できない。サラダにかけるものとして最高の選択肢は、EVOOだ。これを、たっぷりかけることをお勧めする。

あるいは、単に全卵をいくつか添えるだけでもいい。パデュー大学の研究では、サラダに全卵を3つ加えた被験者は、1つも加えなかった被験者と比べて、カロテノイドの吸収が3倍〜8倍に増えたという。もし卵を食べられないのなら、アボカドを加えてもいい。そうすればカロテノイドのような脂溶性の栄養素のすばらしい恩恵にあずかり、脳の働きがグンとよくなるだろう。

EVOOに含まれる注目成分「オレオカンタール」

ここで改めて、EVOOが脳に良い理由を説明していこう。

EVOOをスプーンに注いで、ゆっくりすすってみてほしい。ちょうどスープを飲むときみたいに。行儀が悪いなんてことは気にしなくていいから(そう、油を飲めと言っているのだ。でも、その理由はすぐにわかる)。飲んだとたん、咽喉の奥に、ぴりっとした刺激を感じるはずだ。これは「オレオカンタール」という化合物によるものだ。

オレオカンタールはフェノールの一種で、体内に炎症が生じたとき、自力で修復する働きを強力に促してくれる植物性化合物だ(通常、フェノールは複数つながった形でポリフェノールのなかにある)。オレオカンタールには抗炎症効果があり、その作用は非常に強力で、非ステロイド性抗炎症薬のイブプロフェンを少量服用するのと同じ効果があるが、こちらは副作用の心配はまったくない。炎症は神経可塑(かそ)性(脳を変える機能で、一生涯続く)を無効にする力が強い。また研究では、気分の落ち込みを生じさせることがわかってきている。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中