最新記事

環境問題に意識高いヨーロッパは「昆虫食」を受け入れたか?

2023年4月20日(木)19時18分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

EU統一の規定 2018年から昆虫食販売を認可制に

これらの昆虫食の販売は、もちろん許可されていた。その頃、EUでは上記4カ国とオーストリアで昆虫食の販売が可能だった。非EU加盟国のスイスでも、男子学生たちが立ち上げたスタートアップ、エッセントがスイスで違法だった昆虫食販売の解禁を促し、市場販売(大手スーパーで)を始めていた。

昆虫食が少しずつ広まり、EUは、2018年1月1日に「新規食品規制」(1997年の改正版)を施行した。この中に「昆虫の全身」が新規食品として加わり(ジェトロ資料7ページ)、昆虫食に関して、EUで統一した規制が敷かれることになった。

昆虫食はアレルギーを引き起こす可能性もあることから、この規制により、安全面で昆虫食販売にふるいがかけられ、EUの認可が必要になった。販売の正式認可を得るには時間がかかる。申請書を提出し、欧州食品安全機関(EFSA)による評価を受けて「推奨」されれば、その後EUが正式認可するという手順だ。申請者は通常、昆虫の一次生産者(繁殖者)だが、昆虫繁殖者協会や養蜂者協会といった団体も申請している。

2018年前までに既に販売されていた昆虫食は販売を一時停止する必要はなかった。申請し、正式認可が得られるまでは販売を続けることができるとした。

申請により、現時点で4種類の昆虫(認可件数にすると6件)がEUから認可を受けている。「部分脱脂したヨーロッパイエコオロギ」「ガイマイゴミムシダマシの冷凍・フリーズドライ」の2つは、昨年のEFSA による推奨を受けて、2023年1月に認可されたばかり。販売に当たっては、原材料欄に昆虫名を明記することが必須だ(注:委細なことだが、この認可は、申請者たちが認可された昆虫を数年間、独占的に販売できるという許可だ。ほかの企業などが同じ昆虫を販売したければ申請が必要となる)。

フランス人の4人に1人は昆虫食経験済み

EUが特定の昆虫食を承認しているものの、ヨーロッパでは、まだ多くの人たちが昆虫食に対してネガティブなイメージをもっていると見られる。2019年に、EU11カ国でサステナブルな食べ物への意識を調べたところ、「将来、肉から昆虫食に変えたいと答えた割合は、平均でたった10%という結果だった。

この調査にはフランスは入っていないが、フランスでは少し事情は違うようだ。英世論調査会社ユーガブによると、フランスでは19%が昆虫を丸ごと調理したものを食べてもいいと答え、25%が昆虫の成分を含む料理を食べてもいいと答えている。また、昨年初めにフランス国内で実施されたオンライン調査(18歳以上の1006人を対象)では、昆虫食は絶対嫌だというのは39%で、61%は昆虫を食べることに抵抗はないと答え、さらに24%はすでに食べたことがあるという回答だった。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中