環境問題に意識高いヨーロッパは「昆虫食」を受け入れたか?
コオロギなどの昆虫食は食糧危機を救うと言われるが…… nicemyphoto - shutterstock
<SDGsへの対応が叫ばれる一方で、コオロギをはじめとする昆虫食は炎上する日本。一方、欧州での取り組みは......>
栄養価が高い食用昆虫は、家畜類の飼育に比べて環境負荷がとても少ないことから、注目を浴びている。昆虫は成長が速いことから短期間での大量出荷が見込め、将来の食糧危機への良策だとも考えられている。
ヨーロッパでは、昆虫食はすでに10年ほど前から一部の大手スーパーや自然食品店が販売したり、学食やレストランでメニューに加えたりして、そのたびに話題になっていた。その後、より多くのスーパーが主に昆虫スナック(磨り潰すさず、丸ごと)や昆虫ハンバーグを販売するようになり、昆虫食はそれほど驚くことではなくなった。
だが今、昆虫食に関する報道がヨーロッパで再燃している。EUが、トノサマバッタやヨーロッパイエコオロギなどの販売認可に続き、今年1月からガイマイゴミムシダマシのパウダーなども認可したためだ。これらの昆虫パウダーを使ったパスタやサプリメントが出回り、近い将来、昆虫食品の種類がぐんと増えるのではないかということで、消費者の間で不安と期待が入り混じっている。
初期は学食で昆虫バーガーや食品大手が昆虫パンを販売
筆者は10年ほど前、ヨーロッパの昆虫食事情について記事を書いた。当時は、ヨーロッパ各地で昆虫食が非常に限定的に食べられるようになった頃だった。環境面でのメリットのほかに、肉食を減らそうという健康志向の高まりと、昆虫は牛、鶏、豚のような感染症(狂牛病や鳥・ 豚インフルエンザ)の危険性が低いことも、昆虫食に関心が寄せられるきっかけになったと記憶している。
昆虫食の消費のしかたは様々だった。ベルギーのブリユッセル自由大学の学食では、昆虫(バッファローワーム)ハンバーグを使ったハンバーガーが飛ぶように売れた。2014年秋のある日、ランチメニューとして出した400個は完売した。この好評を受け、その後、昆虫入りナゲットも販売したと聞いた。
オランダでは、大手スーパーのユンボが2014年秋に試食会を開催し、2015年1月から全国のユンボで昆虫スナックや昆虫ハンバーグの取り扱いを開始した。同じく2015年の初めには、イギリスのメキシコ料理チェーンで、期間限定メニューとして出したコオロギ料理が週に1500皿も売れているとか、昆虫スナックのオンライン販売やポップアップレストランが登場したという報道があった(英紙ガーディアン)。
2017年には、昆虫食パンが大きな話題を呼んだ。フィンランドの有名な老舗チョコレートメーカー(パン・菓子類も販売)のファッツェルが、オランダ国内でコオロギパウダー入りのパンを発売したのだ。1斤あたり約70匹分(コオロギは、パンの重量の3%)を使ったこのパンは「世界初の昆虫パン」とうたっていたこともあるが、パンにも昆虫を使うこと、また有名食品メーカーが昆虫食に取り組んだことのインパクトが大きかったということだろう。