最新記事

環境問題に意識高いヨーロッパは「昆虫食」を受け入れたか?

2023年4月20日(木)19時18分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
コオロギとコオロギをすり潰したパウダー

コオロギなどの昆虫食は食糧危機を救うと言われるが…… nicemyphoto - shutterstock

<SDGsへの対応が叫ばれる一方で、コオロギをはじめとする昆虫食は炎上する日本。一方、欧州での取り組みは......>

栄養価が高い食用昆虫は、家畜類の飼育に比べて環境負荷がとても少ないことから、注目を浴びている。昆虫は成長が速いことから短期間での大量出荷が見込め、将来の食糧危機への良策だとも考えられている。

ヨーロッパでは、昆虫食はすでに10年ほど前から一部の大手スーパーや自然食品店が販売したり、学食やレストランでメニューに加えたりして、そのたびに話題になっていた。その後、より多くのスーパーが主に昆虫スナック(磨り潰すさず、丸ごと)や昆虫ハンバーグを販売するようになり、昆虫食はそれほど驚くことではなくなった。

だが今、昆虫食に関する報道がヨーロッパで再燃している。EUが、トノサマバッタやヨーロッパイエコオロギなどの販売認可に続き、今年1月からガイマイゴミムシダマシのパウダーなども認可したためだ。これらの昆虫パウダーを使ったパスタやサプリメントが出回り、近い将来、昆虫食品の種類がぐんと増えるのではないかということで、消費者の間で不安と期待が入り混じっている。

初期は学食で昆虫バーガーや食品大手が昆虫パンを販売

筆者は10年ほど前、ヨーロッパの昆虫食事情について記事を書いた。当時は、ヨーロッパ各地で昆虫食が非常に限定的に食べられるようになった頃だった。環境面でのメリットのほかに、肉食を減らそうという健康志向の高まりと、昆虫は牛、鶏、豚のような感染症(狂牛病や鳥・ 豚インフルエンザ)の危険性が低いことも、昆虫食に関心が寄せられるきっかけになったと記憶している。

昆虫食の消費のしかたは様々だった。ベルギーのブリユッセル自由大学の学食では、昆虫(バッファローワーム)ハンバーグを使ったハンバーガーが飛ぶように売れた。2014年秋のある日、ランチメニューとして出した400個は完売した。この好評を受け、その後、昆虫入りナゲットも販売したと聞いた。

オランダでは、大手スーパーのユンボが2014年秋に試食会を開催し、2015年1月から全国のユンボで昆虫スナックや昆虫ハンバーグの取り扱いを開始した。同じく2015年の初めには、イギリスのメキシコ料理チェーンで、期間限定メニューとして出したコオロギ料理が週に1500皿も売れているとか、昆虫スナックのオンライン販売やポップアップレストランが登場したという報道があった(英紙ガーディアン)。

2017年には、昆虫食パンが大きな話題を呼んだ。フィンランドの有名な老舗チョコレートメーカー(パン・菓子類も販売)のファッツェルが、オランダ国内でコオロギパウダー入りのパンを発売したのだ。1斤あたり約70匹分(コオロギは、パンの重量の3%)を使ったこのパンは「世界初の昆虫パン」とうたっていたこともあるが、パンにも昆虫を使うこと、また有名食品メーカーが昆虫食に取り組んだことのインパクトが大きかったということだろう。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中