牛乳=骨太は間違いだった! 「牛乳をたくさん飲む国ほど骨折が多い」衝撃の研究結果

2023年3月31日(金)12時35分
生田 哲(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

1980年以降、平均身長の伸びがピタリと止まった

このデータと、その分析からこんな結論が得られる。


1.戦後、日本人は男女ともに背が伸びたが、この伸びは主に5歳までの幼児の期間に達成されたもので、その後の伸びはたいしたことはない。
2.日本人の身長の伸びは1980年以降、止まった。

基準とした1948年当時は、1945年の敗戦からわずか3年が過ぎたばかりで、国民は極貧生活であり、食うや食わずの状態だった。1948年に5歳だった子どもは終戦2年前の1943年生まれである。栄養状態はかなり悪かったし、牛乳・乳製品なども口にできなかった。

一方、2020年に5歳の子どもは食べるものが豊富な時代に育った。この結果、5歳の男子を見ると、2020年は1948年にくらべ、身長は7.9cm(111.6-103.7)も伸びた。では、この身長の伸びは牛乳によるものかというと、そうではない。敗戦後の日本は食べるものがなく、カロリーが少なかったのである。だから、牛乳・乳製品に限らず、肉類でも魚介類でも穀類、マメ類でも、カロリーになるものなら何でも食べさえすれば、栄養が満たされ、身長が伸びたのである。

それから、1980年以降、日本人の身長の伸びがピタリと止まったのは、すでに十分な栄養が与えられていたので、最終的な身長は遺伝で決まっている以上には伸びないからである。日本人にいくら栄養を与えたとしても、白人ほど背が高くはなれないのである。

米農務省は「1日3杯の牛乳」を推奨してきたが...


【神話】
牛乳は骨を丈夫にし、骨粗しょう症を防ぐ

できるだけ避けたいことのひとつは、高齢になって寝たきりになることである。その原因のひとつとされるのが、骨粗しょう症である。骨粗しょう症は、骨からカルシウムとコラーゲンが過度に流出することによって起こる。牛乳・乳製品メーカーは、マスコミを通じて、日本人は欧米人にくらべ、カルシウム不足だから、牛乳でカルシウムを補って骨を強くしましょうと喧伝する。これを信じた多くの中高年の女性がせっせと牛乳を飲んでいるが、本当に、牛乳は骨を強くするのだろうか?


【科学的検証】
ウソである。

牛乳は栄養価の高い飲み物である。栄養学ではカルシウムとビタミンDをいっしょに摂取すると、骨が健康になると謳われてきた。USDA(米農務省)は、牛乳が健康を増進し、骨密度(単位面積当たりの骨量)を上昇させると主張し、1日3杯、牛乳を摂取するように勧めてきた。さらにUSDAは、これを実践すれば、骨折に関連するアメリカの医療費を少なくとも20%削減できる、とアメリカ国民に檄(げき)を飛ばしている。

もし、牛乳を飲めば、骨が強くなるという主張が正しいのなら、より多くの牛乳を飲む国や地域は骨が丈夫で骨折が少ないはずである。だが、データを見ると、その反対なのである。1986年、この衝撃の事実をハーバード大学のマーク・ヘグステッド教授が「カルシウムと骨粗しょう症(Calcium and osteoporosis)」という題名の論文で発表した(*2)。

Hegsted DM. Calcium and osteoporosis. J Nutr.1986 Nov; 116(11):2316-9. PMID: 3794834

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中