先延ばしをする人は、なぜ自分を「完璧主義者」と言いたがるのか?
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<本物の完璧主義者は、達成不能な高い目標を掲げすぎて苦しんでいる。他方、単なる先延ばし人間は、衝動に負けやすいという特徴をもつ>
先延ばしは遺伝要素があるとはいえ、環境要因も大きい。「先延ばし研究」の世界的権威が、DNA解析、脳科学、進化生物学、心理学など膨大な研究をメタ分析し、人類永遠の課題を科学的に解き明かした『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』(CCCメディアハウス)より抜粋。
一般に、先延ばしをする人は完璧主義者なのだとよく言われる。自分に課す基準が高すぎて、その理想に届かないのがいやで、課題に手をつけられない、というわけだ。
この「先延ばし人間=完璧主義者」説は、説得力がありそうに聞こえるし、耳に心地がいい。おおむね、完璧主義は好ましい資質とみなされているからだ。「あなたの最大の欠点は?」という問いに、あなたはどう答えるだろう?
アメリカの視聴者チャレンジ型のテレビ番組『アプレンティス』で優勝を目前にしていたビル・ランチックという男性は、こう答えた。
「ぼくは完璧主義すぎるんです。それが欠点ですね」。そう言われれば、相手はこう言わないわけにいかない。「いや、完璧主義はいいことですよ。高い理想に向けて努力し続けるのですから」
しかし、「先延ばし人間=完璧主義者」説にはデータの裏づけがない。この点は先延ばし研究の分野で最も詳しく研究がなされているテーマで、これまでに何万人もの人を対象に調査がおこなわれている。
そうした研究結果を見る限り、完璧主義と先延ばしの間にはほとんど相関関係がない。完璧主義度の診断基準「オールモスト・パーフェクト・スケール(=おおむね完璧な基準)」を作成したカウンセリング心理学者のロバート・スレーニーによると、「完璧主義者はそうでない人に比べて、先延ばし癖の持ち主が少なかった。つまり、これまで個別の事例に基づいて主張されてきた通説が覆されたのである」。
私の調査でも、同様の結論が得られている。几帳面で、計画的・効率的に行動できる完璧主義者は、概してものごとをぐずぐず遅らせたりはしない。
では、私たちはどうして、先延ばしの原因が完璧主義だと思うようになったのか。理由は単純だ。完璧主義者のなかで、たまたま先延ばし癖に悩まされている人は、いかにも完璧主義者らしい行動を取り、セラピストなどに相談する確率が高い。