先延ばしをする人は、なぜ自分を「完璧主義者」と言いたがるのか?
その結果、先延ばしに関する臨床心理学の調査記録には、完璧主義者がたくさん登場する。一方、完璧主義者でない先延ばし人間(や先延ばしをしない完璧主義者)は、セラピストにあまり相談しない。それだけのことだ。
完璧主義者はものごとを先送りすることに罪悪感を覚えがちなので、自分の欠点を改めたいと思う傾向が強いのである。このタイプの人たちが抱える問題の原因は、完璧主義そのものではなく、あまりに高い理想と実際の能力の間のギャップだ。
もし、あなたが完璧主義者で、しかも達成不能な高い目標を掲げすぎて苦しんでいるのであれば、その状況を変えたいと思うのは当然のこと。
完璧主義が先延ばしの原因でないとすると、先延ばしの最大の要因はなんなのか。何百件もの研究を通じて、先延ばし人間に共通する人格上の特徴がいくつか指摘されているが、とくに際立っている要素が1つある。
それは、衝動に負けやすいことだ。せっかちで、すべてをいますぐ手に入れたいと感じやすいのである。衝動に負けやすい人は、自制心を発揮したり、楽しいことをあとに延ばしたりするのが難しい。要するに、将来のためにいま我慢することが苦手なのだ。
未処理の課題を抱えているときに感じる不安にどう反応するかも、その人の衝動性の強弱によって決まる。衝動性の弱い人は、不安に背中を押されて早めに課題に取りかかる場合が多い。
ところが、衝動性の強い人は正反対の反応を示す。締め切りの不安を感じると、途端に課題を先送りにしてしまう。不安感の発生源である課題から一時的にでも逃れようとしたり、その課題を意識から排除しようとしたりするのである。目先のことしか考えない人間がいかにも取りそうな行動だ。
それに、衝動性が強い人は、計画性がなく、整理整頓が苦手で、集中力が乏しい。私の同僚のヘンリー・ショーウェンバーグに言わせれば、「衝動をおさえるのが苦手で、忍耐心がなく、規律をもって仕事ができず、スケジュール管理のスキルに欠け、計画的にものごとをおこなえない」場合が多いのである。
要するに、衝動に負けやすい人は、前もって計画して仕事に取り組むのが不得手で、ようやく仕事に着手したあとも、すぐに気が散ってしまう。そうなると、もはや先延ばし街道まっしぐらだ。