最新記事

移民

日本が外国人に「選んでもらえない国」になった時、日本人が直面すること

2022年12月11日(日)09時09分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

外国人にとって日本は魅力的な国ではなくなった

 大げさだなー。でもさ、これから働く環境も少しずつ整備されていくんじゃないの?

ジョンソン そうだといいのですが......。というのも、これまで日本に働きに来ていた人たちの国も、今後は経済的にどんどん豊かになりますから。

彼らはわざわざ他国へ働き口を探さなくても、自分の国でじゅうぶん条件の良い職に就けるようになります。日本がこれから経済的に繁栄すれば話は別ですよ。しかし、かつての途上国と日本の経済格差がどんどん縮まっているのが現状です。

タナカ つまり、日本は働く場所として選ばれなくなるってこと?

ジョンソン そうです。これまでは門戸を広くすれば、外国から人を集めることができました。しかし、これからは先進国どころか途上国でも少子高齢化が進みます。そうなったとき、外国人にとっての労働環境が整っていない日本は、彼らの選択肢になるでしょうか[※6]。

タナカ でも、それはそれで仕方ないよね。ぼくはおじいさんになったら、移民ではなくて、日本人に介護してもらいたいしね。

ジョンソン Oh......。そうですか。たしかにタナカさんみたいな考えの人もいるでしょうね。ですから、だからこそッ! これから日本をどうするかをみんなで考える必要がありますよ!! 国として移民をこれ以上受け入れないとしたら、働く人は減ります。

それによって、いまよりはあらゆるモノの値段が高くなったり、サービスの質が下がったりすることになります。それでも文句をいわないようにしなければいけませんね。インターネット通販で頼んだ品物が、いまならその日のうちに届いたりします。それが3日後になるかもしれませんね。

 働く人が減るというのはそういうことか......。人間を相手にして、いいとこ取りはできないってことだよね。みんながしあわせに共生できる社会にしないとね。移民については、付け焼き刃でなく、正面から考えなきゃいけない時期にさしかかっているんだね。


【関連記事】
「ロシアが戦争を始めた理由」を説明できますか? 教養としての「ニュースを読み解く力」とは
iPhoneが高すぎて買えない日本、30年でなぜこれほど貧しくなったのか?


【注】
[※1]開発途上国の人を受け入れ、企業などの現場で技能や技術を修得させる制度です。国際貢献を目的に、1993年にはじまりました。実習期間は最長5年間です。ただ、実態は低賃金で働く人としてあつかわれることも少なくなく、国内外で批判を浴びるようになりました。国も対応を迫られ、2017年には技能実習生の保護などを盛りこんだ技能実習法を定めました。

[※2]2019年4月、「特定技能」という在留資格(外国人が日本に滞在できる証明)のもとで、初めて外国人を「単純労働者」として受け入れることになりました。これは、人手不足が深刻な14業種(建設、宿泊、農業、飲食料品製造業、外食業など)に限定していますが、最終的には期間制限なく滞在できるしくみです。

[※3]インターネット上で保守的な意見を発表する人たちです。外国人差別を助長する一因にもなっています。

[※4]外国人による犯罪件数は2005年に4万3,622件を記録しましたが、2019年は1万4,789件でした。

[※5]制度としてはすでに外国人も年金や健康保険などを使えます。

[※6]スイスのビジネススクールであるIMDによると、日本の「働く場所」としての魅力は61カ国中54位になっています。


【公式サイト】『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』



 『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク
 栗下直也 (著)/ニューズウィーク日本版編集部 (編集)


(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者が訪米、2日に米特使と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中