最新記事

ヘルス

「米化」でブレイク オートミールにハマった人たちに起きた変化とは

2021年11月28日(日)13時50分
阿古真理(作家・生活史研究家 ) *東洋経済オンラインからの転載

かといって、主食とおかずを組み合わせる日本人の食習慣は、そう簡単に変えられない。主食は欲しいがカロリーを抑えたい、という人にオートミールはありがたいものだったのだろう。特に米化して食べる人は、ご飯と同じように食べられることも魅力と受け取っているのだ。

ご飯を中心とした食事にも変化

しかし、ご飯を中心にした生活も変化しつつある。「和食はおかずをいくつも作らなくちゃいけない」と水野さんは言っていた。特に、オートミールの米化にハマっている人たちが口にするのは、ご飯を炊く手間だ。

洗って浸水させ炊くのに1時間半前後かかる米のご飯は、10分、20分でできる時短レシピが広まった今、時間がかかる印象が強まっている。また、少人数家族や家族の生活時間がバラバラな家庭では、一度に食べきれずに冷凍し、食べる際に解凍するなどの手間も加わる。従来の米のご飯自体が、時代の変化に対応しきれなくなっている。

ご飯と味噌汁を組み合わせる食事は、必須アミノ酸が全部含まれるなど、栄養バランスが整う意味で理想的だ。冒頭に挙げた鈴木さんの友人たちは、「本当においしいのは米だよ」と口をそろえるという。

しかし、ライフスタイルが多様化し、食の選択肢が豊富になった今、好むと好まざるにかかわらず米のご飯を用意しづらい人たちが増えてきている。もしかすると、米の食べ方自体を見直す必要がある時代になったのかもしれない。外食が制限されたコロナ禍でコメの消費量が減ったのは、それだけ家庭内でご飯を食べる人が減っていたからだろう。

若い世代ほどオートミールにハマっていくのは、従来の食生活が現代人に合わなくなってきたからではないか。オートミールブームは、日本の食生活の転換を示しているのである。

阿古真理(あこ・まり)

作家・生活史研究家
1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら。
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドバイ、渋滞解消に「空飛ぶタクシー」 米ジョビーが

ワールド

インドネシア輸出、5月は関税期限控え急増 インフレ

ワールド

インド政府、3500万人雇用創出へ 120億ドルの

ワールド

トランプ氏の対日関税引き上げ発言、「コメント控える
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中