【インタビュー】LL・クール・J、11年ぶりの新作に込めた「ヒップホップへの愛」
Still Doin’ It Well
社会派とでも呼ぶべき作風は、1曲目の「スピリット・オブ・サイラス」から顕著だ。これは、13年に元ロサンゼルス市警の警官クリストファー・ドーナーが、同僚ら4人を殺害した事件を、ドーナーの視点から語る体裁になっている。事件前に解雇されていたドーナーは、犯罪被疑者に対する過剰な暴力を内部告発したことが解雇につながったと主張していた。
通常ならパブリック・エネミーあたりが曲にしそうなテーマだ。しかも10年以上前の事件について、なぜLLは曲を書くことにしたのか。
当時、LLは警察関係者や友人から、「君は見た目がドーナーに似ているから、ドーナーの身柄が確保されるまで外出しないほうがいい」と忠告されたのだという。
「ラッパーとして、あらゆる人種やジェンダーを受け入れ、尊重しているつもりだ。でも世の中で起きていることを扱わないのは、アーティストとして無責任だし臆病だと思った」と、LLは語る。「自分の文化のために声を上げないでどうする? 『NCISに出演してがっぽり儲けた』とでも歌えばいいのか」
ヒップホップは昨年、誕生から50周年を迎え、40代や50代のラッパーも増えた。それだけにLLは、ヒップホップは若者だけの音楽ではないことを証明したいと考えている。「LL・クール・Jがラップのアルバムを発表しなかったら、世界を、そして自分自身をだましている気がする」
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