最新記事
韓流カルチャー

世界を席巻するK-POP・韓ドラ、他国のエンタメにはない「ユニークな特徴」とは?...BTSからイカゲームまで

K-WAVE FUSION

2024年8月23日(金)14時37分
トム・オコナー(米国版副編集長)

葛藤も変化もエネルギーに

韓国のエンタメが世界中の何十億という人々に前例がないほど広まっていることは、19世紀に西洋人の間で「隠者の王国」と呼ばれた孤立主義的な王朝の遺産を持つこの国が、途方もなく世界に露出しているということでもある。

そのプロセスは、最新テクノロジーに執着する国民性によって加速している。韓国はインターネット利用者、スマートフォン所有者、SNS利用者の割合が世界でもトップレベルに高い。

韓国の勝利の戦略において伝統が重要な要素であるなら、外部の文化へのアクセスが氾濫することはリスクにもなり得る。

「韓国では、特に若い世代を中心に、外国の文化を高く評価している」と、柳は言う。

「ジャズ、コカ・コーラ、ハリウッド、ビデオゲームなどのアメリカ文化に引かれる人が多い。そうしたコンテンツや異文化は相互に交流し、影響を与え合っている。そのように影響を与え、影響を受けている文化もまた、進化して、変化していく。韓国では日常の生活様式も大きく変化してきた」

一方で変わらないものもあると、柳は確信している。

「孝や義など、基本的な文化的概念の一部は変わらない。韓国は家族中心の社会だからだ。親は子供のために犠牲を払うものとされ、だから子供は親に孝行する。つまり、文化の根底にある流れは同じだ。それをさまざまな方法で表現するようになっただけだ。韓国が伝統文化を失うのではないか、弱めるのではないかと心配する人もいるだろう。しかし、そういう不安はいつの時代にもあるものだ。人々はいつも心配して、それに慣れ、順応しながら文化を守ってきた」

韓国文化は現代の発展や異文化交流の目まぐるしいスピードに合わせて進化しているが、韓国社会の中では大きな溝が生じている。重要な問題をめぐり、男女間、世代間、保守派や進歩派、その他のグループなどの間で亀裂が広がっているのだ。

しかし、これについても柳は、この「熱い」国が不利な状況を取り込んで、より広い意味での前進につなげる機会だと考える。

外から見れば常に何かしら問題を抱えているかもしれないものの、葛藤を経験しながら、その影響を受けて落ち込むのではなく、立ち上がり、発展と進歩の足がかりにするのだという。

「韓国ほど多くの変化を経験してきた国はほとんどない」と、柳は指摘する。冷戦の勃発は朝鮮半島を分断しただけでなく、100万人以上の命を奪った壊滅的な戦争をもたらし、ソウルを含む多くの都市を破壊した。

現在の活気あふれる摩天楼の姿は、当時のソウルからは想像もつかない。今や世界で最も安全な都市の1つとして頻繁にランキングされてもいる。

北朝鮮のミサイルが上空を飛ぼうが、街頭で抗議デモが起ころうが「人々の生活は続いている」と、柳は言う。

「実際、この国は数え切れないほど衝突を経験しながら、国として発展してきた。それが韓国文化の根源的な力であり、原動力だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ

ワールド

米政権の「テックフォース」、約2.5万人が参加に関

ビジネス

カナダ中銀、次の一手「見通し困難」 不確実性高い=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中