最新記事
韓流カルチャー

世界を席巻するK-POP・韓ドラ、他国のエンタメにはない「ユニークな特徴」とは?...BTSからイカゲームまで

K-WAVE FUSION

2024年8月23日(金)14時37分
トム・オコナー(米国版副編集長)
BTS(防弾少年団)

BTSはメンバーの大部分が兵役中で活動を休止しているが、変わらぬ人気を誇る KM STUDIO

<北朝鮮との緊張を抱えながらも文化産業を大きく発展させた原動力とは──柳仁村文化体育観光相が韓流カルチャー成功の背景と今度の展望を語る>

1950年に勃発した朝鮮戦争が、正式には終結していない韓国。53年に休戦協定が結ばれたものの、それから70年たった今も、北朝鮮との分断と対立は続いている。そんな韓国が、世界のエンターテインメント界を席巻するようになって久しい。

韓流として知られるこの現象は、まず、1990年代後半に東アジアで広がった。当時の韓国は、軍事政権による開発独裁から民主化を遂げ、アジア通貨危機による経済の混乱から立ち直り、文化面の爆発的な成長が起きてた。

あれから25年余り。今や立派な民主主義国となった韓国は、優れた音楽やドラマ、映画を次々と生み出し、世界中のお茶の間で親しまれるまでになった。

KポップグループのBTS(防弾少年団)は欧米やアフリカの若者も熱狂させ、ドラマ『イカゲーム』は独特のストーリーで視聴者の心をつかみ、映画『パラサイト半地下の家族』は米アカデミー賞で、初めて作品賞を受賞した外国語映画となった。


だが、世界に誇るソフトパワー成長の陰には、いつも北朝鮮の核の脅威がちらついていた。「戦争は終わっていない。停戦状態にあるだけだ」と、韓国の柳仁村(ユ・インチョン)文化体育観光相は語る。

柳はこの6月、韓国政府の総合文化芸術スペース「ニューヨーク・コリアセンター」がマンハッタンにオープンしたのを機に訪米した。


「『それなら(韓国は)危険な場所なのか』と聞きたくなるかもしれない」と柳は続けた。「緊張を常に意識しなければならないのは事実だ」。柳自身、かつては俳優として活躍していた。「だが、アーティストたちは、その環境を乗り越えて、自らの創造性を養う糧にしている」

実際、休戦協定により軍事境界線を挟むように設置されたDMZ(非武装地帯)は今、韓国で最も人気の観光地の1つになっている。韓国側にはレストランや娯楽施設があるほか、毎年、平和をテーマにした映画祭さえ開かれている。

「核問題などのために、最近(北朝鮮との間で)緊張が高まっているのは確かだが、観光客がそれを肌身に感じることはないだろう」と柳は言う。「むしろ、ここ数年観光客は増えている」

さらに柳は、「アートの分野でも同じだ」と語る。「分断を乗り越えるために、多くのことが試みられた結果、分断をものともしない文化が生まれてきた」

確かに、朝鮮半島の分断をテーマにした韓国の映画やドラマは少なくない。

2000年公開の映画『JSA』は国内外の賞を受賞したし、北朝鮮でクーデターが起きる物語を描いた17年の映画『鋼鉄の雨』は大きな話題を呼んだ。


19年にネットフリックスで公開された恋愛ドラマ『愛の不時着』は、中国、日本、アメリカなど外国でも圧倒的な数の視聴者を獲得して話題になった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中