最新記事
メンタルヘルス

「谷間」がまる見え、だが最も注目されたのは「肩」...ジェンナー姉妹の投稿に専門家が警鐘を鳴らすワケ

Experts Warn Against Kylie Jenner-Inspired 'Yacht Shoulders' Body Trend

2024年7月28日(日)13時05分
ラーリ・ハンコック

セレブの画像を見て自分の体型に不満に覚えた人たちが、いきなりワークアウトに殺到するだろうというホーイの予測は、多くのTikTokユーザーによってすでに証明されている。彼らは、「ヨットショルダー」や「ヨットアーム」という名目で、ジムでトレーニングに励む動画を共有している。そうした動画は大きな反響を呼んでおり、ユーザーの@protekphilippeがジェンナー姉妹に言及して投稿したトレーニング動画は770万回以上も再生されている。

不安を覚え、自分の人生に満足できなくなっていく

これまでも、セレブの影響で人々が不安を覚え、体型について不健全な強迫観念をもち、健康を後回しにしてしまうケースは多々起きている。ヨットショルダーは、その最新の例にすぎない。ホーイは次のように語っている。「ヨットショルダーという流行は、自分の体を大切にし、自らを愛し、食べ物や運動と健全な関係を育むよう女性たちに促すものではない。ソーシャルメディアで有名になった女性たちはインフルエンサーであり、他人から称賛されることで利益やメリットを得ていることを、決して忘れてはならない」

「一定の外見であるべきだとか、特定のものを持つべきだと言われれば言われるほど、私たちは自らの人生に満足できなくなっていく」とホーイは続ける。「自分への満足度が下がれば下がるほど、『幸せ』になる方法を求めてインフルエンサーに注目するようになる。このサイクルは、すべての人が目を覚ますまでずっと続いていくだろう。つまり、こうあるべきだと感じる姿ではない、現在の自分自身を認める時間を、もっと持てるようになるまで」

英ロンドンを拠点とする精神分析医モナ・ハンセンは本誌に対し、ソーシャルメディアがメンタルヘルスとボディイメージに及ぼす影響についてこう述べた。「ソーシャルメディアの流行が人の行動とウェルビーイングにもたらす影響を調査した膨大な研究では、ソーシャルメディアが有害な影響を及ぼし得ることが示されている」

「ソーシャルメディアの利用パターンと、孤独感の悪化や、自己申告による鬱感情の増加といったウェルビーイング的な側面の間には、比較的弱い関連性しか認められないというエビデンスのレビュー論文が複数存在する。にもかかわらず、多くの研究が、ソーシャルメディアの利用と、自分の体に対する不満の間には明らかな関連性があること、あるいは、ソーシャルメディアの利用と、ボディイメージを巡る不安や摂食障害など、密接に関連した構成概念との間に、明らかな関連性があることを示している」

閲覧しているコンテンツの種類も、問題を引き起こす可能性がある。ハンセンは、「ドイツで先ごろ実施された実験の研究結果が、今年になって発表された。女性被験者が、無作為に割り当てられたさまざまなソーシャルメディアコンテンツを閲覧するという実験で、明確な因果関係が示された」と述べている。

「摂食障害をもつ女性でも、もたない女性でも、フィットスピレーション(fitspiration:スリムで筋肉もある女性が、健康増進やフィットネスへの取り組みを促すコンテンツ)を閲覧すると、自分の体への不満が強くなった。一方、ボディ・ポジティブ(体の大きな女性が、自らの体を愛そうと女性たちに呼びかけるコンテンツ)を閲覧すると、体への不満が低下した」
(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

コンゴ・ルワンダ、米仲介の和平協定に調印 鉱物巡る

ビジネス

IMF、日本の財政措置を評価 財政赤字への影響は限

ワールド

プーチン氏が元スパイ暗殺作戦承認、英の調査委が結論

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中