ビール麦とは? 若ビールとは? 意外と知らないビールの造り方を解説
アルコール発酵を行うには、糖分が必ず必要になる。それを作り出すのが、「糖化」の工程だ。麦芽をお湯と混ぜ合わせて温度を調整すると、麦芽に含まれる酵素が自身のでんぷんをマルトースなどの糖に分解するのだ。同時に、酵素はたんぱく質をペプチド(アミノ酸が連なったもの)とアミノ酸に分解する。たんぱく質やペプドはビールの泡を形作る上で重要な役割を果たし、アミノ酸は醸造する際に酵母の栄養となり、酵母自体の増殖や香り成分の生成にも寄与する。
糖化が完了したら「麦汁ろ過」に移る。麦芽をお湯に混ぜ合わせた粥状の「マイシェ」から麦芽の皮など余計な固形物を分離して麦汁を得る工程だ。濁りや雑味成分が出てしまわないようにじっくりと時間をかけて、できるだけ清澄な麦汁を得ることが重要となる。
ろ過後の麦汁は煮沸釜に移され、ホップとともに煮沸される。ホップを加えることで、ビール独特の香りや苦味が出るだけでなく、泡持ちの向上などの効果も生まれる。煮沸を終えた麦汁はワールプールタンクと呼ばれる円筒形の沈殿槽で凝集物の除去を行う。その後、冷却して温度を下げれば発酵の準備が完了だ。
麦汁をビールに変える「発酵」
「発酵」はビール造りで最も重要な工程の1つだ。冷却した麦汁に酸素を供給して酵母を添加すると発酵が始まる。これを前発酵または主発酵という。酵母は最初にグルコースを取り込み、それが終わると次にマルトースを取り込んでアルコールと炭酸ガスに変えていく。ビールにおける発酵の方法は、酵母が発酵後半に液面付近に浮いてくる上面発酵と、タンクの底に沈む下面発酵の2種類に大きく分かれる。下面発酵は通常、10℃前後で1週間から10日ほど、上面発酵は15~25℃で3~5日ほどで前発酵は終了し、〝若ビール〞が完成する。
出来上がった若ビールは貯酒タンクに移される。その際、再び活発な発酵が始まる。これが後発酵だ。後発酵をうまく進めるには、適量の酵母を残しておいたり、発生する炭酸ガスの溶存量を一定に保つ必要があるため、気を抜くことはできない。