マイケル・ジャクソンのボディーガードだった私が見たセレブたちの素顔
I Was a Bodyguard for VIPs
若手のケンダル・ジェンナーや、ベラとジジのハディド姉妹などのボディーガードも務めた。素顔の彼女たちはみんな、とても礼儀正しくて偉ぶらず、こちらの要求は快く聞き入れてくれ、いつも人当たりがよかった。
お世辞じゃない。ステージを下りてからも彼女たちは素敵で、他人を見下すようなことはなかった。だからこそ彼女たちはスーパーモデルになれた。まあ、さすがにマイケル・ジャクソンには及ばないと思うけれど。
ベラ・ハディドの場合、普通のジャケットを着て帽子をかぶっていれば、まあ移動は楽だった。ファッションショーの当日は彼女を見に多くの人が集まるが、控えめに動けば外食や買い物もできた。日曜日に、普段より1時間早く店を開けてもらうとかの交渉は必要だったけれど。
この仕事では「ボディーガード」らしく見えないように振る舞うことも大切だ。相手が女性セレブの場合は、あえてポケットに両手を突っ込んで歩いたりもした。そうしないとクライアントが妙に目立ってしまうからだ。
しかし逆に、「この人は屈強なボディーガードに守られているんだぞ」とアピールしなければならない場合もある。まあ、いろいろだ。
幸いにして、私は身をていしてセレブの命を守るような場面には遭遇しなかった。それは、単なる幸運ではない。こちらが事前に、綿密な作戦を立てていたからだ。
いざセレブを連れて外出するときには、車を止める場所はもちろん、隣の車との距離が十分にあるかも確認する。周辺にファンが多そうなら、現地の警備スタッフにも協力を要請するのが常だった。
撮影現場でマット・デイモンと
私は幸いにもかなりの数の有名人の警備を担当し、無事に使命を果たし、それなりの報酬を得て、自分の会社を立ち上げることもできた。もう現役は退いたが、この15年間で個人としても340万ドルほどは稼げた。
実を言うと、その頃から映画関係の仕事には興味を抱いていた。ドバイ首長家の警護を終えた後、私は同僚の勧めもあって映画界のエージェントに連絡し、軍人がらみの演技アドバイザーなら任せてくれと売り込んだ。
すると1週間後、依頼が来た。そして2カ月間、『グリーン・ゾーン』の撮影現場でマット・デイモンと一緒に過ごすことになった。昔は特殊部隊にいたから、アクションの指導も衣装や武器の時代考証もお手のものだった。