最新記事

サバイバル

無人島にたどり着いた日本人たちがたらふく味わった「牛肉より美味い動物」とは?

2021年9月7日(火)20時25分
椎名 誠(作家) *PRESIDENT Onlineからの転載

タマゴの食べ過ぎによる便秘は雑草で解決

鳥の大群の産卵がすむとアオウミガメが陸にあがってきて産卵するようになった。ウミガメは陸にあがってくるとしかるべきところに後ろ足で丁寧に穴を掘って、大きなアオウミガメは1頭で90個から170個ほどもまんまるいタマゴを産む。タイマイは130個から250個ぐらい産む。産みおわると丁寧に砂をかけてまた海に戻っていく。

それらを捕まえて食べるのは容易だが、ウミガメの上陸も日ごと数をましてくるのでもてあましてくる。そこでやがてくる冬に備えてウミガメを飼育するようにしたらどうか、という意見が出てきた。

アオウミガメの卵はまん丸でいくらゆでても白身がかたまらないことを知った。しかしとてもおいしい。タイマイのタマゴもうまいが親の肉は臭みがあってまずかった。アカウミガメの肉も、においがあって、食用にならない。いずれにしろその2種類ともタマゴはうまいのでそればかり食べていたからなのか全員完全な便秘になってしまった。

野菜をちっとも食べないからだ、と考えて島にはえている草をよく調べたら4種類あることがわかった。そのうちワサビに似た草があるのを発見し、それをさしみにそえて食べるとなかなかうまい。同時に海水をおわんに半分ぐらい飲むようにしたら全員の便秘がなおった。

ウミガメ用の牧場

ウミガメを飼うにはどうしたらいいか。以前掘ってつかいものにならなかった井戸のなかにいれておいたら、まもなくみんな死んでしまった。

そこで海岸の波打ち際に杭をたくさん打ってその杭とカメの後ろのヒレにしっかりと索を結んでおいたらカメは空腹になると勝手に海に入って魚を食べ、あとはおとなしく砂浜に戻ってきて甲羅干しをしている。そういう牧場を2カ所につくり沢山のカメを飼うことになった。もちろん全体の面倒を見るためのカメ係も交代の役割になった。

船長は前に海図を見て、西の方に別の島があることを覚えていた。島といっても高さは殆どなく、自分たちのいる平均標高2メートルぐらいの平らで心細い規模だ。

books20210907_a.jpgアザラシ半島にいくといつでも沢山のアザラシに会えた。船長の最初の命令と約束を守り、誰もアザラシに危害をくわえようとはしないので、人間をはじめてみたアザラシたちはたちまち人間と仲良くなった。とくに親しくするためには釣った魚を手土産に持っていくと友達になるのも早かったが、人間から見ると個体の見わけがつかないだろう。しかし親しくなったアザラシはその人をむこうから見つけてくれるようになった。そしてそばにくると甘えて寄りそってくるようになったというから可愛い。

乗組員のひとりととりわけ親しくなった大型アザラシの友情など読んでいると思わずのめりこんでしまう。

船長が岩の上に立って棒切れを海に放り投げる、アザラシはいっせいにその棒切れを追っていき、一番早く噛みついたのがほうりなげた人間のところに持ってきて、さらに投げてくれ、とみんなで待っている、というエピソードもある。

椎名 誠(しいな・まこと)

作家、映画監督。
1944年、東京都生まれ。辺境の旅人としてルポの執筆、ドキュメンタリー番組などに出演。90年『アド・バード』で日本SF大賞受賞。『ぼくは眠れない』(新潮新書)など著書多数。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

エジプト大統領、トランプ氏にイラン紛争停止訴え 原

ワールド

トルコ領空にイラン発射の弾道ミサイル、NATO迎撃

ワールド

サウジ紅海側ヤンブー港の原油輸出量、最大能力付近の

ビジネス

金融政策「良い位置」、イラン情勢の影響見極め可能=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中