最新記事

「糖質制限ダイエット」がいけないこれだけの理由 炭水化物は少なすぎると不健康に

2021年5月29日(土)15時38分
津川友介(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) 助教授) *東洋経済オンラインからの転載

炭水化物は多すぎても少なすぎても不健康に

実際に、炭水化物の摂取量と死亡率の関係を評価してみると、U字の関係にあることがわかっています。つまり、炭水化物の摂取量は多すぎても少なすぎても不健康になってしまうということを意味しています。

この研究をもう少し詳しく見てみると、動物性の蛋白質・脂質の摂取量が多い人において、糖質制限ダイエットをしている人の全死亡率、心筋梗塞などによる死亡率、糖尿病の発症リスクが高いという結果でした。

一方で、植物性の蛋白質・脂質の摂取量が多い人においては、逆に糖質制限ダイエットをしている人の全死亡率、心筋梗塞などによる死亡率、糖尿病の発症リスクは低いという結果でした。

人は食べないとおなかが空いてしまうので、食事の量を単純に減らすということは難しいものです。何かの摂取量を減らすと、その代わりに何かほかのものを食べることで空腹にならないようにする傾向があります。

糖質制限ダイエットをしている人の中には、肉などの蛋白質の摂取量を増やすことで満腹感を得ている人が多いと思いますが、肉は食べすぎると大腸がんのリスクを増やしてしまうなど健康に悪影響があります。そもそも、不溶性の食物繊維が豊富に含まれる「茶色い炭水化物」の摂取量が減ること自体も、大腸がんのリスクを上げる原因になります。

白い炭水化物を茶色い炭水化物に置き換えることで、健康に良い効果があるだけでなく、ダイエットになることも研究結果からわかっています。健康を犠牲にすることでやせることができる「諸刃の剣」である糖質制限ダイエットよりも、茶色い炭水化物を積極的に食べるという食事法で、健康的にやせていただきたいと思います。

糖質制限ダイエットの減量効果は一時的

糖質制限は比較的すぐに減量を実感できるので、良いと信じている人が多い印象があります。しかし、そもそも糖質制限ダイエットによる減量効果が一時的であり、長期的に維持することが難しいことはあまり知られていません。

炭水化物の摂取量を控える糖質制限と、脂質の摂取量を控える低脂質ダイエットを比較した研究があります。その結果を見ると、確かに6カ月までの短期的な追跡においては、糖質制限ダイエットに軍配が上がることがわかります。

炭水化物の摂取割合と死亡率との関係。

注:炭水化物の摂取割合と死亡率との関係。U字となっており、炭水化物の摂取割合が少なすぎても多すぎても死亡リスクが高まることを示している。網掛け部分は95%信頼区間。
出典:Seidelmann et al. Lancet Public Health. 2018.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ロのキーウ攻撃を非難 「ウラジーミル、

ビジネス

米新規失業保険申請6000件増、関税懸念でも労働市

ビジネス

米中古住宅販売、3月5.9%減 需要減退で一段低迷

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 2
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 3
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 6
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    迷惑系外国人インフルエンサー、その根底にある見過…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中