最新記事

映画

「生きさせろ!」 コロナショックで苦境に陥る映画館、生き残りかけ模索

2020年4月5日(日)21時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

日本ではクラウドファンディングやふるさと納税も活用

日本では、営業停止にはなっていないが、一部都市部のシネコン系列を中心とした映画館は、週末外出自粛を受けて休館にするなどの対策がとられている。

日本でもアメリカ同様ドライブインシアターに注目が集まりだし、野外映画イベントを中心に実績を積んできたOutdoor Theater Japanは今後全国各地で順番に映画上映を行っていくと発表した。

一方、日本のミニシアターの経営は他国と同様に窮地に追い込まれている。多くのアート系映画館がクラウドファンディングを設立、ネット上からの支援を募り、有料会員制を導入している映画館では積極的に会員募集を行うなどして、生き残りを模索中だ。

神戸映画資料館上映館、北海道浦河町・大黒座では、ふるさと納税に参加しているため、これらをアピールするなど、独特な方法をとる映画館も存在する。週末休館を決めた映画館「アップリンク渋谷/アップリンク吉祥寺」を経営するアップリンクでは、配給作品の見放題キャンペーンを開始した。3カ月間2980円で配給作品60本を見ることができる。各映画館とも手探りながらさまざまな方法が生み出されている。

イギリスとドイツは政府が支援に動く

感染が広まるヨーロッパのなかでも、特にイギリスとドイツは文化支援を積極的に行うと発表している。イギリスのアーツ・カウンシル・イングランド(ACE)は文化支援に1億6000万ポンドを提供するとし、その支援は個人活動のクリエイターやフリーランサーも含まれている。

また、ドイツでは、モニカ・グリュッタース文化大臣が「芸術・文化・メディア産業におけるフリーランスおよび中小の事業者に対する無制限の支援」という具体的な声明を出した。これによると、映画館を含む場所の運営費支援助成金として最大500億ユーロ、生活に影響を受けたアーティスト個人には、最大100億ユーロを投じるとしている。

危機的な状況で人に寄り添うのが「映画」

ニュースを見るたびに想像以上の感染者・死者数が増えていく。このような状況で世界中の人々は映画館のことなど考えている余裕などないかもしれない。しかし、作家・太宰治がエッセイ「弱者の糧」でこう語っている。

「私が映画館へ行く時は、よっぽど疲れている時である。心の弱っている時である。敗れてしまった時である。真っ暗いところに、こっそり坐って、誰にも顔を見られない。少し、ホッとするのである。そんな時だから、どんな映画でも、骨身にしみる。」

世界中の人々がホッとできるようになるにはまだまだ先は長いが、その時が来るまでなんとしても映画館を守っていかなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中