利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」
Science History Institute [CC BY-SA 3.0]
<訪日外国人にも人気の日本庭園。なぜ歴史に名を残した人たちが日本庭園にたどり着くかを考えると、その見方も変わってくる。稲盛和夫が創設した京都賞の受賞者が招かれる和輪庵にはどんな意味が込められているのか>
自然の景観を人工的に構成した日本の造形空間。基本的には観賞や散策などのため住居の周囲に樹木や石を配置し,築山や泉池などを築く(ブリタニカ国際大百科事典より)。
これが、日本庭園だ。古くは『日本書紀』や『万葉集』にも庭園の記述があるとされるが、平安時代以降、日本各地に造られてきた。金沢の兼六園や岡山の後楽園、水戸の偕楽園など、人々を魅了する日本庭園は各地にあるが、訪れるのは日本人だけではない。
英語・フランス語の通訳を行い、京都を中心に庭園ガイドをしている生島あゆみ氏によると、アメリカ、オーストラリア、フランス、オランダ、イギリス、スウェーデン、イスラエルなど、案内する外国人の国籍はさまざま。その職業も、会社社長から弁護士、医師、建築家、カメラマン、画家、アーティストまで、多種多様だ。
実際、Japanese gardens(日本庭園)に関する英語の情報はインターネットにあふれており、アメリカには日本庭園の専門誌まである。今や日本庭園は、日本を訪れる外国人にとって外せない「見るべきもの」となっているのだ。
個人の旅行者向けに「ガーデンスペシャルガイドツアー」を行っているという生島氏はこのたび、「なぜ、一流とされる人たち、歴史に名を残した人たちは、日本庭園にたどり着くのか」をテーマに執筆。『一流と日本庭園』(CCCメディアハウス)を刊行した。
庭園そのものだけでなく、それらを造った人物、深い関わりのある人物の人生を見つめた上で、庭園との結びつきを読み解いた。これ1冊で日本庭園の見方・楽しみ方が変わるというユニークな一冊だ。
足利義満は金閣寺を、稲盛和夫は和輪庵を造った。スティーブ・ジョブズは西芳寺に、デヴィッド・ボウイは正伝寺に通った。ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。
稲盛和夫(1932年〜)と
和輪庵(わりんあん)(京都)
稲盛が創設した京都賞の受賞者が、招かれる庭として話題の和輪庵。経済界を牽引する稲盛和夫の世界観が集約され、京セラ迎賓館としての役割を担う。
稲盛和夫フィロソフィ
京セラフィロソフィは、「人間として何が正しいのか」、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いに(稲森和夫が)真面目に向き合い、京セラを今日まで発展させた経営哲学です。稲盛が、「京セラを経営していく中で、私は様々な困難に遭遇し苦しみながらもこれらを乗り越えてきました。その時々に、仕事について、また人生について自問自答する中から生まれてきたのが京セラフィロソフィです」と、公式サイトで説明しています。
『京セラフィロソフィ』(稲盛和夫著)は、あまりにも有名ですね。同書の中で、私が最も興味を持ったのは「京セラフィロソフィ」のほかに、「六波羅蜜」について語っている箇所です。「六波羅蜜」とは、「彼岸に至る」までの6つの修行のことです。御釈迦様は、人生の究極の目的は、悟りを開くということであり、その悟りの境地が、彼岸に至ることだと説かれました。