最新記事

スタンフォード大学 集中講義

悪行をやり尽くした末、慈善活動家になった男の話

2016年2月3日(水)06時57分

 スコット・ハリソンの物語から学べる大切な教訓が二つあります。第一に、情熱は後からついてくるものであって、やってみるのが先だということです。実際に経験してみると、想像力が刺激され、自分はこうしたい、こうありたいといった最高のビジョンを描くことができるようになります。スコットの場合、慈善団体でのボランティアが天命だと思えたわけですが、そこに至るまでには何の予備知識もありませんでした。それは、誰しもおなじではないでしょうか。第二の教訓は、人生の舞台を決めるのは、私たち一人ひとりだということです。選択肢は無数にあり、どれを選ぶかは自分次第なのです。

◇ ◇ ◇

 まもなく東日本大震災から5年になる。あの震災を機に、自分の生き方を見つめ直した人は多いのではないだろうか。安定した大企業で働く代わり映えのしない生活でいいのか。人生において意味のあることを成し遂げなくていいのか。本当は自分にもやりたいことがあったのではないか。

 今からでも遅くはない。情熱なんて、最初はなくてもいい。まずは行動してみることだ。

 人生においてなにか意味のあることをしたいと思っている人は多くいるが、頭の中にあるアイデアを形にできる人はそう多くないと、シーリグは言う。そこで彼女は本書を著した。アイデアも、創造力も、解決策も、ひらめきを生んで実現するのはスキルにほかならないと考えているからだ。スキルであれば、誰もが学び、実践できる。

【参考記事】心が疲れると、正しい決断はできない

 シーリグによれば、思い描く未来にたどり着くために必要なことは3つある。第一が起業家的な心構えであり、それは『20歳のときに知っておきたかったこと』にまとめたという。第二は、問題を解決し、チャンスを活かすためのツール。それは2作目の著書『未来を発明するためにいまできること』(高遠裕子訳、三ツ松新解説、CCCメディアハウス)で取り上げた。

 そして第三に必要なのが、ひらめきを形にするためのロードマップだ。最新刊『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』のテーマである。これから、本書に収められたさまざまなエピソードをいくつか抜粋し、シーリグのメッセージと共に紹介していこう。

※スタンフォード大学 集中講義(2):レゴ社の「原点」が記されていた1974年の手紙
※スタンフォード大学 集中講義(3):ある女性の人生を変えた、ビル・ゲイツがソファに座った写真
※スタンフォード大学 集中講義(4):やる気の源を尋ねたら、その会社は数か月後に行き詰まった
※スタンフォード大学 集中講義(5):プライベートジェットで「料金後払いの世界旅行」を実現する方法
※スタンフォード大学 集中講義(6):「解決策を100個考えなさい」とティナ・シーリグは言った

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』
 ティナ・シーリグ 著
 高遠裕子 訳
 三ツ松 新 解説
 CCCメディアハウス


『20歳のときに知っておきたかったこと
 ――スタンフォード大学 集中講義』
 ティナ・シーリグ 著
 高遠裕子 訳
 三ツ松 新 解説
 CCCメディアハウス


『未来を発明するためにいまできること
 ――スタンフォード大学 集中講義II』
 ティナ・シーリグ 著
 高遠裕子 訳
 三ツ松 新 解説
 CCCメディアハウス

スコット・ハリソンのスタンフォード大学での講演

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今季大豆1200万トン購入へ 米財務長官「貿

ワールド

トランプ氏、エヌビディアのブラックウェル協議せず 

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ワールド

中国がティックトック譲渡協定承認、数カ月内に進展=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中