最新記事
教育

養老孟司が「景気のいい企業への就職」より「自分の財産を持て」と語る真意

2024年7月29日(月)12時25分
養老 孟司 (解剖学者、東京大学名誉教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

【私の世代はサツマイモとカボチャは一生分食った】

私は鎌倉のハリス幼稚園に通わされていたんですが、別に行きたいから行っていたわけではない。ただ、そのときの状況を考えてみますと、大体半ズボンに決まっていたんですね。そして、履くものが何もないから運動靴で、戦争中ですから、もう穴があいています。


 

ハリスはまだ私立だからよかったんですが、小学校に入ってから、時に母親が新しい靴なんか買ってきて、それを履いて学校へ行ったら、帰りにはないんですよ。新しいのは誰かが履いて行っちゃっていますから。そういう時代ですから、新しい靴は履かないほうがいい。

それから、靴下なんかありませんから、当然素足です。あんなの、あったってすぐ穴があいちゃいますから。それで半ズボンで素足で、だから冬は寒いんですね。それが当たり前だと思って暮らしていました。

食べるものというと、サツマイモとカボチャですから。私の世代は、お聞きになればわかると思いますが、たいていの人がサツマイモとカボチャはもう食わないと言っています。一生食う分、もう食ったと。懐石料理で、たいてい最近はサツマイモとカボチャが入っていますが、それだけは残すというのが我々の世代です。

【苦労して偉くなった人が奨学金をつくる不思議】

そういうふうに暮らしてきて、自分たちの子どもを育てて、そのときは一生懸命やって、そんなことは考えたことはありませんでしたが、今ごろになってふとおかしいなと思うことがあるんです。

それは、うちでよくけんかになる話なんです。大げさなけんかをするわけじゃないんですが、たとえば本田宗一郎とか松下幸之助とか、偉い人がいますね。小学校しか出てない。苦学して偉くなって、お金持ちになった。そういう人が、時々新聞に出ているんですが、奨学金をつくるわけです。何が新聞に書いてあるかというと、自分は若いときに苦学して大変だったから、若い人が勉強をするために奨学金を出してやると。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉

ビジネス

日産、九州工場で24日から再び減産計画 ネクスペリ

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中