最新記事
教育

養老孟司が「景気のいい企業への就職」より「自分の財産を持て」と語る真意

2024年7月29日(月)12時25分
養老 孟司 (解剖学者、東京大学名誉教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

【自分とは違う環境だからうまく育てられない】

そういう記事を見ると、女房にけんか吹っ掛けて、何だ、これは、おかしいじゃないのというわけ。自分が貧乏して苦労して偉くなったんだから、若い者も俺と同じようにしろと、なぜ言わないんだろう。それでお金もらって楽させたら、じゃあ若い人はよくなると思っているのかなと。そうすると女房が、そんなへその曲がったことを言うもんじゃないと、そういう議論になるわけです。


 

だけれども、この問題を私は案外深刻な問題かなと思っています。なぜかといいますと、私どもが親としての世代として考えてみると、子どもに自分の育った環境とはまったく違う環境を与えてあげている。そうすると、親が子どもの教育ができなくて、当たり前なんですよ。違うんだから。違うことをやらせちゃっているわけですから。

これがどこまで効いてくるかというと、影響はかなり大きいんですね。

【日本は過去を白黒はっきりさせるのを避けてきた】

世界遺産に広島の原爆ドームが登録されたときに、日本の代表がじつは根回しをしました。新聞に出ていたと思いますが、どういう根回しをしたか。世界遺産に選ぶことの意味づけについて一切議論しない、しないでくれという根回しをいたしました。

そして、それに対して、中国とアメリカが文句を言ったんじゃないけれども、態度を保留した。つまり、日本はどういうつもりで、どういう意味合いであれを保存しようとするのかと。この根回しは、ご存じのように核兵器反対とか、そういうことを正面に出したくないということでやったんだと思いますが、極めて日本型です。はっきりとさせないで、ともかく登録するという点では、それは成功したわけです。

それはよろしいんですが、皆さんもお気づきだと思いますが、中国なり韓国なりが日本に対して言うことがあります。それは歴史のことです。近ごろは慰安婦問題というのがありまして、私のところに分厚いコピーを送ってきた方があります。それは現在出ている教科書です。使われている教科書のコピーでして、こういうふうに書かれていますと。それはけしからんという人なんですが、とにかくそういうふうに歴史に関して議論がいろいろある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、8月は2.5%減の386万戸 価格

ワールド

ヒズボラ指導者、通信機器爆発は「宣戦布告」 イスラ

ワールド

ハリス氏とトランプ氏、全国で支持率拮抗 激戦東部州

ビジネス

米新規失業保険申請、1.2万件減の21.9万件 4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 3
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高められる次期首相は高市氏だ
  • 4
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 5
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    「気持ち悪い」「正直言って変...」サブリナ・カーペ…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 10
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に…
  • 6
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 7
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 10
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中