東大生が世界で活躍するために読む本の共通点とは?
スタンフォード大学でアントレプレナーシップとイノベーションの講座を担当している著者が、息子が20歳になるのを機にまとめたという本書には、自身が「社会に出たときに知っていればよかったと思うこと」「社会で自分の居場所をつくるのに不可欠だと思ったこと」が詰まっています。
著者の講座は全米の起業家育成コースの中でもトップクラスの評価を得ているそうですが、この本もまた、「起業家精神」とは何か、「イノベーション」とは何かについて学ぶことのできる、最良のテキストになっています。
東大生協では、最初は内容に興味がある人が買っていましたが、その後、徐々に火がつきました。海外の名門大学の講義本はどれも東大生の関心を引いたようですが、タイトルがまさに現役大学生の年齢だということもあってか、他に比べて毎年堅実に売れ続ける本の代表格でした。
といっても、書店として特別なことをしたわけではないのです。ただ、東大生は自分で良書を見つけることができるため、この本に対しても実に察しがよく、反応も早かった記憶があります。世間の評判とは関係なく、東大生自らが「いい本」だと見抜いたのが、この本だったのでしょう。
東大生も大いに刺激を受けたのでは?
この本のどこが東大生を引きつけたのかと言えば、やはり、発想力を鍛える過程が実際の講義を基に明かされている点ではないかと思います。通常は鍛えられるものではないとして、諦めてしまいがちな「発想力」を、誰でも身につけられるものとして実践しているのです。
実効性のある「起業家精神を身につける方法」を一冊で知ることができるのが、この本の大きな魅力であり、それは東大生にとってものすごく有効な情報でもあるのでしょう。
また、本書を開くと、冒頭にこんな一文があります――「いま、手元に5ドルあります。二時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんはどうしますか?」。
まず、この一文に引き込まれます。そこから次々に、スタンフォードの学生たちの成功アイデアが列挙されるため、私自身、この一冊を読むだけで一体どれだけの事例を学ぶことができるのだろう、と圧倒されたことを覚えています。本当にインパクトがありました。
それと同時に、海外の大学では通常の講義でこんなにもレベルの高いことをやっているんだ、という実態を突きつけられる思いがしました。日本の大学ではまだまだいわゆる「座学」、つまり受け身の講義が多いため、東大生も大いに刺激を受けたのではないでしょうか。
もちろんスタンフォードの学生は優秀なのですが、この本に登場するアイデアは、例えば、混んでいるレストランで行列に並ばなくて済む方法など、それほど突拍子なものではなく、ほんの少し頭をひねってみるだけでいいんだ、と思わされるものばかりであることも印象的です。