最新記事

メンタル

自分に自信がないのは克服できる、自分ひとりで(認知行動療法の手引き)

2019年12月27日(金)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

また、自分には価値がないと思っているため、余暇を楽しまなかったり、病気になっても我慢したり、自分への適切なケアを怠ってしまう。あるいは、何時間もかけて身支度を完璧に調えようとしたりもする。そうしなければ、自分は他人に見てもらえない、そんな資格がないと思っているからだ。

自己評価は「思い込み」に過ぎない

こうした低い自己評価は、就職の面接やプロポーズなど、特殊な難題で自信を喪失したことから引き起こされる場合もあれば、さまざまな背景から自己批判が芽生え、心に根付き、それが生活全般にまで影響を及ぼしている場合もある。

いずれにせよ、低い自己評価の中心にあるのは、自分に対する否定的・悲観的な「思い込み」だと本書は指摘する。多くの場合、身長や体重と同じように揺るぎない「事実」として語られがちだが、自己評価はひとつの意見であって、決して事実ではない。

そこで本書では最初に、その思い込みがどのようにして生まれてくるのか、詳しいところまで踏み込むことから始める。それによって、自分が自分を見る目について完璧に理解できるようになるというわけだ。

次に、なぜ否定的な見方がずっと続いてきたのか、その理由に迫る。そして、不安や自己批判から有害な行動を取る、という悪循環を断ち切る方法を模索していく。そこでは、自己批判に反論したり、肯定的な見方を作り上げたり、あるいは、低い自己評価を補う方法を考えたりする。

そうして最後に、低い自己評価の核となっている、自分に対する否定的な見方を突き崩す方法を考えることになる。長年の思い込みを取り払うのは簡単なことではない。そのため、最初からそれに取り組むのは得策ではなく、まずは現状を理解することが近道なのだという。

理論と実践とが一体化した療法

こうしたアプローチは「認知行動療法」と呼ばれる。「認知」は、さまざまな考えや思い込み、態度に焦点を当てることを指し、これにより、なぜそういう問題が起き、なぜ続いているのかが分かりやすくなる。その後、これまでとは違う「行動」をすることで、自分が変わっていく方法を見つけるのだ。

これは理論と実践とが一体化した療法で、高い効果を上げることが科学的に実証されているだけでなく、他の療法と比べて再発の可能性が低いことでも知られている。

当初はうつ病の治療法として確立されたが、その後、不安障害や恐怖症、アルコール依存、摂食障害などに広く適用されている。「困った考え方のパターンを日常の行動を通して変えていくことで、たとえばうつ病や広い意味での精神障害に高い治療が得られることがわかったのです」と、訳者も本書のまえがきに記している。

この認知行動療法は、低い自己評価を改善する上でも理想的な方法。そこで、自分自身で実践し、自ら問題を克服できるマニュアルとしてまとめられたのが本書だ。深刻に悩んでいる人だけでなく、もう少し自信をもちたいと思っている人、ネガティブな見方から解放されたい人にも役立つだろう。


この本は、前向き志向の力を説く本でもないし、非現実的なほど自分に対して肯定的になりなさいと言っているのでもありません。あなたの弱点や欠点を、人間一般に対する好意的な見方のなかに組み込んで、「完璧」よりは「及第点」を目指すよう後押しする見方、バランスのとれたゆがみのない見方を獲得するための本なのです。(219ページより)

2020年をより良い年にするために、まずは「自分に自信をもつ」ことから取り組んでみてはどうだろう。本1冊あれば、誰もが自分を変えていけるのだから。


自信をもてないあなたへ 自分でできる認知行動療法
 メラニー・フェネル 著
 曽田和子 訳
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中