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クリエイティブな仕事をするのに素質は要らない

2018年12月5日(水)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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本書ではクリエイティブ思考の実践的なノウハウだけでなく、時に理論的に、クリエイティビティとは何かについても詳しく解説している(『「ひらめき」はこう生まれる――クリエイティブ思考ワークブック』58~59ページより)

クリエイティビティはもはや必須の「問題解決能力」だ

著者たちも述べているように、かつてクリエイティビティは、誰もが持っているわけではない「贅沢品」のように思われてきた。だが、この21世紀において、クリエイティブな思考をするスキルはもはや「必需品」だ。仕事に限らず私生活においても、クリエイティビティが成功のカギを握っている。

クリエイティビティは日本語では「創造性」と訳される。この言葉の印象もあって、クリエイティビティを芸術的な表現や、無から有を生み出す(=創造する)ようなものだと思っている人が多いかもしれない。しかしながら、現代で求められているのは、問題解決能力としてのクリエイティビティだ。

本書に紹介されているところによれば、IBMが世界37カ国・1500人のCEOを対象に大規模な調査を行ったところ、彼らが最も差し迫った脅威と感じているのは「変化の速度が増していること」だった。それに適応するために必要なのが問題解決能力であり、それはクリエイティビティなのだ。

クリエイティブな思考が「つながりを見つける」ことであるのなら、そもそも「無」から何かを生む作業ではない。「ひらめき」、つまり、既にある何かと何かを結びつけることで、新しい機能を持たせたり、より便利にしたり、性能を高めたり、あらゆる問題を解決することができる。それが時にイノベーションになる。

また別の研究によると、リーダーシップに欠かせないのは経験や知性ではなく、最善の解決策を思いつくことだという。良い解決策は、良いアイデアから生み出される。そして良いアイデアは、たくさんのアイデアを出すことによって見出されるが、そのカギとなるのが「つながり」だ。

人の脳を膨大な素材がつまった図書館に喩えると、クリエイティブでない「平凡な人」の脳というのは、きちんと並べられ、分類され、管理が行き届いているのだという。そこには有能な司書がいて、調べてほしいことを依頼すると、丁寧に、その通りの素材を取り出してきてくれる。

一方、クリエイティブな人の脳には指揮者がいる。その人は、図書館内のあらゆるものを駆使して、思いつく限りの素材を引き出し、遠く離れた無関係なもの同士を強引に結びつける......といったことを同時進行で行う。だからこそ、独創的なアイデアや変わった選択肢が飛び出してくる。

平凡な人がクリエイティビティを身につけるには、自分の脳内にいる司書を鍛えればいい、ということになるが、そのためにはまず「拡散的思考」、つまり思考を広げる必要がある。この時に重要なのが、判断を保留することと、量を追求することだ。

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