最新記事

教育

東大生に育てたいなら、子供に「100点」を目指させてはいけない

2017年12月26日(火)18時14分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

子供が最も言われたくない台詞は?

チャレンジという観点で言えば、そもそも「100点」ですらゴールにならない。自分の子供が秘めている才能を開花させ、それを最大限に伸ばしてほしいと思っているのであれば、80点にしろ100点にしろ、ゴールはむしろ設定しないほうがいいようだ。

だが「もっと! もっと!」と子供に望むあまりに、多くの親がやってしまっている大きなミスがある。それは「人と比べること」。

楠本氏は前著で、子供に「勉強しなさい」と言ってはいけない、と繰り返し述べているのだが(そうすることで子供のやる気を殺いでしまう)、その後、自身が教えている子供たちにアンケートをしてみたそうだ。すると、子供たちが「勉強しなさい」以上に親に言われたくないのが「人と比べること」だったという。

そんなにも世の親は、自分の子供をよその子と比較しているのか......と楠本氏自身も驚くほど、男女を問わず、学年も問わず、見事に一致した回答で、しかも、全員が即答だった。

もしかすると、「一番を目指せ」とか「いい大学に入りなさい」と言わない(言えない)代わりに、近所の子供や親戚の子供、あるいは、きょうだい同士で比較しているのかもしれない。あまりにも親が比較するせいで、人の悪口ばかりを言う性格になってしまった子供もいるという。

例え競争することで伸びていくタイプの子供であったとしても、それを親には言われたくない――それが子供の本音だ。それほどに、親の言葉は子供の中に強く残り、大きな影響を与えている。

親にも自信と覚悟が必要

親の過大な期待を背負って押し潰されそうになる子供が多い点についても、楠本氏は懸念を示している。教育熱心な親ほど、勝手に進路を決めたり、どんどん子供に習い事をさせたりして、子供自身が何をやりたいのかを見失わせてしまう。そうして、あるときプッツリと糸が切れ、何もやらなく(やれなく)なった子供もいるそうだ。

子供に無理やり勉強させ、たくさんの習い事をさせようとするのは、親自身に自信がないからではないか、と楠本氏は言う。それでは子供を追いつめ、自信を持たせるどころか、自分で何も考えられない人間になるか、親に潰されたと一生恨まれることにもなりかねない。

子供に最も大きな影響を与えるのは、やはり親だ。だからこそ、親にも自信が必要不可欠だし、ある部分では覚悟が重要になる。

例えば、家の中で何かのルールを決めたときは、親こそ徹底しなければいけない。というのも、ゲームやマンガ、あるいはスマートフォンを「1日○時間」と決めて、それを破ったら没収すると言いながら、実際にはそうしない親が多いのだ。


 捨てると言ったら、本当に捨てるべきです。必要になったら、また買えばいいのです。子どもが勉強の習慣を身につけられないまま育つのと、その数万円と、どちらが大事でしょうか。親の甘さを子どもに見破られていませんか?(本書69ページより)

【参考記事】話題のモンテッソーリ教育を、家庭で実践する秘訣

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中首脳、4日に電話会談と報道

ビジネス

米12月求人件数、55.6万件減少 労働市場は緩や

ワールド

米上院委、ケネディ氏の厚生長官指名承認 週内にも本

ビジネス

米製造業新規受注、12月は前月比0.9%減 航空機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 6
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 7
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」…
  • 10
    手塚治虫「火の鳥」展 鑑賞チケット5組10名様プレゼ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中