東大生に育てたいなら、子供に「100点」を目指させてはいけない
子供が最も言われたくない台詞は?
チャレンジという観点で言えば、そもそも「100点」ですらゴールにならない。自分の子供が秘めている才能を開花させ、それを最大限に伸ばしてほしいと思っているのであれば、80点にしろ100点にしろ、ゴールはむしろ設定しないほうがいいようだ。
だが「もっと! もっと!」と子供に望むあまりに、多くの親がやってしまっている大きなミスがある。それは「人と比べること」。
楠本氏は前著で、子供に「勉強しなさい」と言ってはいけない、と繰り返し述べているのだが(そうすることで子供のやる気を殺いでしまう)、その後、自身が教えている子供たちにアンケートをしてみたそうだ。すると、子供たちが「勉強しなさい」以上に親に言われたくないのが「人と比べること」だったという。
そんなにも世の親は、自分の子供をよその子と比較しているのか......と楠本氏自身も驚くほど、男女を問わず、学年も問わず、見事に一致した回答で、しかも、全員が即答だった。
もしかすると、「一番を目指せ」とか「いい大学に入りなさい」と言わない(言えない)代わりに、近所の子供や親戚の子供、あるいは、きょうだい同士で比較しているのかもしれない。あまりにも親が比較するせいで、人の悪口ばかりを言う性格になってしまった子供もいるという。
例え競争することで伸びていくタイプの子供であったとしても、それを親には言われたくない――それが子供の本音だ。それほどに、親の言葉は子供の中に強く残り、大きな影響を与えている。
親にも自信と覚悟が必要
親の過大な期待を背負って押し潰されそうになる子供が多い点についても、楠本氏は懸念を示している。教育熱心な親ほど、勝手に進路を決めたり、どんどん子供に習い事をさせたりして、子供自身が何をやりたいのかを見失わせてしまう。そうして、あるときプッツリと糸が切れ、何もやらなく(やれなく)なった子供もいるそうだ。
子供に無理やり勉強させ、たくさんの習い事をさせようとするのは、親自身に自信がないからではないか、と楠本氏は言う。それでは子供を追いつめ、自信を持たせるどころか、自分で何も考えられない人間になるか、親に潰されたと一生恨まれることにもなりかねない。
子供に最も大きな影響を与えるのは、やはり親だ。だからこそ、親にも自信が必要不可欠だし、ある部分では覚悟が重要になる。
例えば、家の中で何かのルールを決めたときは、親こそ徹底しなければいけない。というのも、ゲームやマンガ、あるいはスマートフォンを「1日○時間」と決めて、それを破ったら没収すると言いながら、実際にはそうしない親が多いのだ。
捨てると言ったら、本当に捨てるべきです。必要になったら、また買えばいいのです。子どもが勉強の習慣を身につけられないまま育つのと、その数万円と、どちらが大事でしょうか。親の甘さを子どもに見破られていませんか?(本書69ページより)
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