「読者が選ぶビジネス書グランプリ」第1位に、「お金には価値がない」と訴える本が選ばれたワケ
──本書は小説形式を取られていますが、その理由についてお聞かせください。
前回の本(『お金のむこうに人がいる』)を書く前に編集者の佐渡島庸平さんに相談したら、「内容が正しければ、安倍さん(当時の首相)にも伝わるよ」と言われたんです。
それで書いたら、本当に安倍派の財政問題の勉強会に呼ばれたんですよ。勉強会に出席して感じたのは、政治家はなにが正しいかよりも、どれが国民の支持を得られるかを気にしているということ。一人ひとりの意識が変わっていかないと、日本はちゃんとした方向に向かないのかなと思いました。
前の本は経済に興味ある人は手に取ると思いますが、その外側にいる人たちには届きません。一人ひとりに訴えかけるためには、感情移入して読みやすい小説形式がいいのではと思いました。
──本作には3人の人物(主人公の中学生・優斗、投資銀行で働いている七海さん、優斗と七海さんにお金のことを教えてくれる謎のボス)が登場します。人物設定にはご自身の体験がリンクされていたりしますか?
僕の親は自営業でそば屋をしていました。1階が店舗で2階が自宅。優斗の設定にそっくりそのまま使っていますね(笑)。(注:優斗の両親は自宅でトンカツ屋を営んでいる。)
あと、僕は以前投資銀行で働いていたのですが、金融をわかっている七海という投資銀行で働く女性がツッコミを入れることで、ビジネスパーソンにも気づきを与えられるかなと思いました。
お金がなくても支えてくれる人たちを大切にしよう
──本書の最大のメッセージである「お金自体には価値がない」。敢えてこれを打ち出したのはなぜでしょうか。
お金の価値の源泉って、その裏側にいる人々の働きですよね。いまの経済は貨幣経済が中心になってしまっているけど、実際はそうじゃなくて、人々が支え合って社会がつくられています。
昔はお金が存在しなくて、家族や村社会で暮らしていましたよね。そこにお金が登場することによって、知らない人たちにも協力の範囲が広がっていったわけです。
だけど「お金=経済」になってしまうと、お金以外で助け合っている人たちの「外側」が中心になってしまう。でも本当は、お金がなくても協力してくれる「内側」を広げることが大事なんです。